間取りと設計
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日本の間取りを悪くした中廊下 その3. 空間の融通性から考える

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日本の間取りを悪くした中廊下  その3 空間の融通性から考える
 

家族構成や住まい方は、時間とともに変化していきます。しかもそのスピードは実感以上のものです。小学生だった子どもが10年もすれば、大学生あるいは社会人になっています。両親がいつまでも揃って元気というわけでもありません。
そうした家族の変化で、間取りは使いにくくなってしまいます。家が腐りやすくなったばかりでなく、融通性のない空間が家の使用期間を短くしています。

いつまでも便利に使える間取りにしたい。誰しもが家づくりの際に願うことでしょう。
しかし現実はきびしく、意外と早くにこんなはずではなかったと不便さを感じるようになることが多い様です。
間取りが家族の時間的変化についていけないケースです。
建築当初はなんとかなったのですが、時間の経過とともに、使いにくくて不便、無駄な空間が多くてもったいない、といったことが起こってきます。
そしていつしか、使われない部屋のほうが多い、という哀れな状態になることも珍しくはありません。

 

使われなくなる部屋は

使いにくい、使われない、いつの間にか納戸になってしまう空間の代表的なものが書斎、応接間、子ども部屋、北側の部屋でしょう。
書斎はすぐに納戸化し、応接間は開かずの間に、子ども部屋は出戻り部屋、北側の部屋は物置に、と目に見えるようです。
どうしてそうなってしまうのか、簡単に見ていきましょう。
書斎は、一般的日本人にはなじまないものです。自宅の個室に閉じこもって勉強したり研究したりする必要性のある方は極めて少ないものです。
男の城、とステータスのつもりでも使用されず即納戸化では哀れさをさそうばかりです。
応接間も同様です。分離された個室の接客空間は自宅には不必要な方が圧倒的です。わざわざ応接間としてつくる必要性はありません。
子ども部屋も寿命は長くて10年程度です。子どもの成長とともに順次空き部屋。
子どもが出ていった時のままという部屋が日本中にあふれています。
北側の部屋は昼間から電灯が必要、冬は寒く、湿気も多い、そんな環境の悪さですからやはり納戸か物置になってしまうのが一般的のようです。
子どもが成長し独立した後は、歳を重ねた夫婦二人が台所と食堂を中心に生活し、あとの多くのスペースは有効に使われないまま眠っている、そんな光景が珍しくなくなりました。
夫婦二人でも家全体をのびのびと有効に使えたらどれほど気持ちがいいか、便利か、もったいない思いが募る一方です。

 

中廊下は間取りの使用期間を大幅に短縮している

もし中廊下がなくリビングなどの家族空間に直接的に書斎や応接間、北側の部屋がつながっていたら、2階の共用空間にダイレクトに子ども部屋がつながっていたら、と考えてみてください。
戸を開けておけば、リビングと書斎、応接間、北側の部屋が一体につながります。
2階も同様に、共用空間と子ども部屋がつながります。
しかも、戸をドアではなく、引戸で大きく開ければ一体空間の開放性は大きくなります。
この考え方を発展させていったのが、「広がり空間」です。
広げられる・閉じられる空間です。つなぎとしての中廊下は存在しません。
中廊下がなければ空間の可変性は極めて大きくなります。
間取りが時間の経過を経ても便利に使えるかは可変性の問題です。
自由自在に使いまわせる可変性を意識すると、中廊下がいかに邪魔な存在かが浮かび上がってきます。

 

中廊下は間取りの自由性を奪ってしまった

動線としての中廊下、現代の間取りはそれが前提となっています。
中廊下がなければ家ではない、といった具合です。極めて硬直した常識に、家づくりに関わる人のほとんどが囚われています。
せめて、中廊下はあってもなくてもどちらでもいい程度の柔軟性が欲しいものです。
そうした柔軟性は、従来の常識や慣習といった呪縛から脱皮させてくれる必要最小限度のものでしょう。
常識といわれるものからではなく、自分自身の頭で考えることが重要なことです。
多くの方がそうなれば、日本の間取りは個性的で豊かな空間へと生まれ変わることができると思います。
中廊下に関して3回に亘ってって述べてきましたが、是非、ご自身でじっくりと中廊下の功罪を見つめていただきたいと思います。

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