間取りと設計
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間取りは単独では存在しない

間取りを考える1

日本に建てる、を忘れている?

前回、間取りは気候風土や伝統、生活習慣を無視して考えられないと述べてきましたが、今回は、その延長上線として各国固有の家の建て方、例えば、石づくりだとか木づくりといった工法と間取りは大きく関連しているのであって、単に間取りパズル的に考えることは構造に無理が生じ、強度的にも問題があるといった観点からみていきます。

 

例えば、窓の大きさも気候風土からばかりでなく構造からも決まってきた

一般的に日本の家は開口部が大きく、欧米の家は小さいことは良く知られています。
これは、気候の厳しい欧米では自然から遮断された空間をつくりたい、気候の温和な日本では自然と融合した空間を求めた、と説明されますが、そればかりではなく、家の構造とも大きく関連しています。
欧米の家の多くは、石を積み上げ壁をつくる伝統をもっています。
石を一つひとつ積み上げるのですから、中間に大きな穴である開口部をつくることは困難であったのです。
これは面材で構成されるツーバイフォーやパネル工法にも当てはまることです。
一方、日本の家は土台と柱そして梁を中心とした軸を組み合わせて、空間を支える骨をつくりますから、かなり大きな開口部がつくれるわけです。
このことは開口部の大きさばかりでなく、部屋の大きさも左右しました。
欧米の間取りが個室中心になりがちなのは、壁の構造が石組であったこととも切り離せません。
欧米でプライバシーの思想が広まったのも、実はこういう家の構造からとも考えられます。
プライバシーの思想があって個室化したのではなく、個室化せざるをえない家であったので、長い期間にプライバシーの思想が育ち定着していったということなのではないでしょうか。
家の構造が文化にまで大きく関わっていたことは不思議ではありません。
一方、日本は雨が多く、木もまわりに沢山ありました。雨を防ぐためには屋根が必要です。その屋根を支えるために、周囲にふんだんにある木を使うことで木構造が発達してきたと考えられます。
大きな屋根の下で家族が集まって生活していた、その中で欧米のプライバシーとは違う生活のルールができてきたのでしょう。
現在の在来軸組工法は、そういった木構造からできあがってきたものです。
木構造を強度という観点からみれば、おのずと原則的なルールがあります。
石を組むのにルールがあるように、木を組むのにも原則があります。
但し、石を組むルールは応用幅が狭く、木を組むルールは融通性が大きいのですが。

 

昔の家は、木を組むルールに基づいて間取りが考えられていた

日本の伝統的な建物は、木を組むルールに従って空間をつくっていました。
構造的に無理なく強い建物でした。その構造の中に、生活の空間、間取りの工夫をしてきたと言えます。
その代表が田の字間取りといわれるものです。
軸組みの構造が明解で骨太、そしてデザイン的にも美しいものでした。
それに比べて、現在の在来軸組工法は残念ながら、構造はちぐはぐ、材料は細い、おまけに美しさも失われたと、情けない状況です。

 

現在の家は、木を組むルールとは関係なしに、間取りをしている

現在の間取りの仕方のほとんどは、平面プランからなされます。
1階のプランを考え、次に2階のプランを考える。屋根をどう掛けるかは最後にと言った具合です。
そして大工さんが、その図面に基づいて建てる。
それの何が悪いのかと思われる方も多いのではないでしょうか?
なにしろほとんどの家が、こうしたプロセスで建てられているのですから。 
このプロセスで家づくりを進めてしまう怖さは、構造が目茶目茶になってしまうということです。
プランに構造を合わせていくのですから、ほとんどの場合、構造に無理が生じてしまいます。
なぜならば、現代の設計者のほとんどは木構造の勉強や訓練は受けていません。構造そのものは大工さんまかせが多くの実態です。
そして、大工さんは影で設計の悪さを言いながらも、何とか無理をして構造上のつじつまを合わせて建てているのが現実です。
何とかなってしまう融通性が在来軸組工法の特徴、優れた点とも言えなくはありませんが、本来もっている明解で強いという特性は失われてしまいました。
そうなれば次のステップに行きます。どうせ本来の木組の良さを失ってしまったのだから、軸組にパネルを組み合わせる、金物でつなぐ、集成材で鉄骨と同じような構造にするなど、凄まじい勢いで木の家は変身を続けています。
やがてその中から、日本にふさわしい工法が定着していくのかもしれませんが、あまり期待はしていません。
何しろ現代社会は、いまだ本質の論理ではなく企業中心の金儲けの論理性で動いているのが現実なのですから。
PACは、「日本での家づくりは骨太の国産材で、本来の木の組み方のルールを生かすこと」を前提に間取りをつくりあげていくことを大原則にしています。
このシリーズは、こうした構造をベースにして間取りを考えていきます。

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