間取りと設計
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小さくつくって、広々暮らす

間取りを考える1

小さくつくって、広々暮らす
 

広々とゆったり暮らしたい、それは誰しもの願いでしょう。しかし、現実は逆、狭くてたまらない、こんど家を建てる時は少しでも大きな家にしようとの思いは日本人にとって共通のようです。
その結果、日本の家の建築面積は少しずつ大きくなり全国平均では40坪程度といわれる程になりました。もはや日本の家はうさぎ小屋と馬鹿にされるレベルではないと思います。しかし、都市部では30坪に満たない家も多くありますし、地方では50坪60坪の家がざらですが、それでも狭く感じられる家もあります。今回は、建坪と広さの関係について考えてみます。

 

建坪が大きいからといって、広々暮らせるわけではない

大きな家は、広い家。と誰しも疑いをもちませんが、実際には、建物の建築面積と広々暮らせることは単純には比例しません。
建築面積がさほど大きくなくても、広く感じられ生活もゆったりとできる家もありますし、60坪も70坪もある大きな家でも狭苦しく、生活がきゅうくつな家もたくさんあります。

 

自分がいる場所が、広くなければ広がりは感じられない

自分がいる場所、そこが広くなければいくら大きな家でも広がりは感じられないでしょう。6畳の部屋がいくらたくさんあっても、そこにいる人には6畳の広がりしか感じられないのですから。
私たちは自分がいる部屋や空間が大きくなければ、広がりを感じることはできません。建物全体の大きさではないのです。
しかし、目的別に部屋をつくるLDKプランで一つひとつの部屋を大きくしていけば、結果として建築面積も大きくなってしまいます。
一つひとつの空間に広がりをもたせ、しかも、建築面積は小さくしようと思えばそれに即した設計の技術が必要になります。

 

空間をそれぞれ共有してつくる

一つひとつの空間を目的別に独立した部屋としてつくらないで、壁という境をとりさり、さまざまな生活空間を一つの空間の中に共有させるかたちでまとめればいいのです。
例えば、キッチンと食堂そしてリビングと茶の間、さらには書斎コーナーそれに応接間などは一体空間の中に仕切らずにとりこむことは十分可能なことです。
子ども部屋もそれぞれ個室としないで大きく一つにつくり、家具などでしきることは今ではむしろ当り前のことになっています。これは今回のシリーズで一貫して提案してきた中廊下のない間取りを違う観点から見たにすぎません。
中廊下をなくせれば、建築面積が大きくとれなくても意外と広々暮らせることができるということを改めて考えてみましょう。

 

アルコーブ

広いだけの空間では、落ち着きがありません。広がりの中のくぼみ空間、凹部を上手に間取りに組みこむことで落ち着いた居心地のいい空間ができます。この空間をアルコーブといい、広がり空間の重要なテーマとなります。
また、穴ぐら的な、巣箱のような空間が広がり空間にくっついていても愉しいのではないでしょうか。

 

吹抜け、高さの違う天井

最近は、天井の高さが高くなる一方のようですが、上への広がりを感じるためにはただ高いだけの天井がつづくよりは、メリハリをもたせた方が有効のようです。
低いところ、高いところ、平均的な高さと一つの空間の中で上手に天井の高さを変えていくと、面的広がりだけでなく立体的な広がりが加わります。
そういった意味で生活空間内の吹抜けは非常に有効ですし、畳の間やリビングの天井を低めにおさえることもいい手法といえます。
吹抜け空間の天井を低めにおさえて、そこにロフトをつくることもよくおこなわれています。

 

ざっくりとした空間を、きめ細やかにつくる

ざっくりとした空間づくりといえますが、これは大雑把につくることではありません。広がり空間の目的の一つは、生活の利便さと豊かさです。それだけに、家族の生活をみつめ、それぞれの生活に応じたきめ細やかな工夫や設計が必要になります。
特に、土地の狭い都市型住宅には尚一層の工夫やきめの細やかさはかかせません。大胆にして緻密な設計が求められます。

 

物を少なく、豊かに暮らす

そして究極のポイント、物にとらわれない、振り回されない生活をすることでしょう。現代日本人は、物質優先文明の中で経済発展を遂げましたし、物質中心の世界経済を支えてもきました。
しかしもう21世紀、そろそろ日本人の根底に流れる美学であるシンプルライフに、また、目覚める時期が到来したのではないでしょうか。
小さくても広い空間で、物は少なく、心豊かに暮らす。何とも美しいと感じませんか。

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