間取りと設計
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空間を美しく使う 納戸スペースの設け方

間取りを考える1

空間を美しく使う 納戸スペースの設け方
 

空間がこまごまと個室に分断されない間取りは、可変性があり時間の経過にも耐えるものですが、同時に、美しさも醸しだします。
視線が通る広がりのある美しさです。しかし、いくら広がりを演出しても物が散乱していては、逆効果というものです。
住まいに美意識をもちこむとシンプルライフにもつながります。21世紀の美はシンプルな豊かさではないでしょうか。

 

空間の美しさは物を必要以上に置かないことから

日本の空間美の伝統は、不必要な物を置かないことにあります。
広がりのある空間、畳や板の間、漆喰壁、欄間、床の間、襖絵など建築的しかけの中に必要な道具だけを置く、季節に応じたしつらえなど空間を生かした贅沢さです。
道具を置く蔵や家具置場も別にあり使用人もいたわけですから庶民の味わえる空間美ではなかったのですが、物に溢れかえった現代生活には参考になる話です。
住まいという空間の大きさに応じて物をもつという当り前の前提が、大きく狂った現代日本の生活です。
足の踏み場に困るほど物を詰め込み、物の隙間で生活するという滑稽を越えた哀れな経験を多くの日本人がしました。
そして物を多く入れられるように、より広い家を求めつづけました。
昭和50年代「日本の住居はウサギ小屋」と呼ばれたあまりにも狭い家からの脱皮なら理解もできますが、都市部を除いては、ウサギ小屋的状況はとうに終わっていますし、都市部も戦後の公団住宅の狭さから徐々に広がり、もはやウサギ小屋と卑下されるレベルからは一歩も二歩も抜け出しています。
それでも広大な土地と資源を背景としたエネルギー浪費型のアメリカ文化と比べればまさしくウサギ小屋なのでしょうが、21世紀は物の豊かさ追求の時代ではありません。
こころの豊かさ、それに基づく美の探求時代が来なければ人類はまた滅びてしまいます。

 

物の多くなる場所に隣接して納戸スペースを

空間に必要以上のものを置かない、そのためには予備のスペースが必要です。
その納戸スペースを上手に配置する原則は、物が多くなる場所の横に設けることです。
季節に応じた物の入れ替えなどが便利にできます。
具体的には、玄関脇の収納スペース、勝手口に隣接した食品庫的スペース、寝室のクローゼット、子ども部屋や共用スペースに隣り合った納戸空間、庭からも使える外納戸、玄関と勝手口を結ぶ土間空間や通り土間、ロフト、階段下の空間利用とかなりの工夫ができます。

 

納戸スペースは細長が便利

そしてそれらの収納スペースは、壁のある細長空間が適しています。
同じ面積でも細長くして物を置ける壁の部分を多くします。
収納スペースは必ずしも高さを必要とするわけではありませんから、屋根空間の天井が斜めになったり低くなったりする部分も有効に使えます。温湿度をコントロールされているPACならば小屋裏も充分収納スペースになります。
出入り口は広めの引戸がベストです。ドアは物の出し入れにも不向きです。

 

納戸スペースに適した窓とは

こうした収納スペースの問題点は、風通しです。
PACは壁の中など躯体内空間を空気が流れていますから間接的に湿気の調整はしているのですが、やはり、室内の直接的換気も欲しいものです。
納戸スペースの条件は壁の多さですから、どうしても窓の大きさや数は制限されがちですし、生活の中心である広がりのスペースからも孤立しがちです。
こういうとすぐに機械換気を思い浮かべる方が多いと思いますが、こうした個室的空間に適した窓もあります。
いわゆる滑り出し窓と呼ばれるもので、開くとガラス戸が開口に垂直になる窓です。
この窓は、風向き次第では1つで部屋の隅々までの換気が可能です。
ガラス戸は開口に垂直になるまで開きます。開いたガラス戸は開口を二分します。
風がガラス戸に当たると、風上側のガラス面に当たった風は、ガラス面に誘導され室内奥まで吹き込みます。
一方の風下側の二分されたガラス戸の空間は負圧領域となり室内の空気を引き抜く力が働きます。
一方で押し込み、もう一方で引き抜くのですから、室内の空気は見事に入れ替わります。
当然、窓の位置や風の強さと方位に影響されますが、風も常に一定の強さや方向で吹いているわけではなく呼吸しているような感じですから、晴れた日の納戸スペースの換気には十分と思われます。
もちろん出入り口の引戸を開放して生活空間とつなげた換気も自在です。

 

収納スペースに応じた物で生活する

シンプルライフの原則は、スペースに応じた物の量をもつことです。
そしてよりシンプルな美しい生活を望むのであれば、生活空間には必要な道具だけを入れ、あとは隣接する収納スペースにしまう、物の量は収納スペースの大きさによって決める、そんな知的美しさの追求も真剣に考えたいものです。
そのための第一歩は、20世紀的欲望で買ってしまった無駄なものは捨てることから始まります。

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