間取りと設計
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日本に建てる、を忘れてる?

間取りを考える1

日本に建てる、を忘れている?
 

 

最近の家づくりの多様性は目を見張るものがあります。一般的に多種多様の文化や文明が混在しえる社会は成熟した世界と言えるのでしょうが、現代日本の家づくりの状況は、成熟した家づくり文化に至る過程の混乱期といった方が当を得ていると思います。

文化や文明の多様性の原点は、それぞれを尊重しあうことです。
一方的押付けがなく、各文化や文明の育ててきた資産を大切にしあい育みあう、ということだと思うのですが、21世紀の現代も、そういった意味では相変わらず野蛮な時代といえます。
世界中の少数民族の絶滅や虐待と、西洋文化・文明の地球全体への押付けは、まさしく人類の未熟性を表しています。
そういうレベルから見れば、家づくりなど些細なことのように思えてしまいますが、実際はそうではありません。
食べる・住むなど毎日の生活にかかわることから、それぞれ大切に育み、互いに学びあい尊重しあうことから、多様性のありがたさが理解できるようになっていくのではないでしょうか。
どのような分野においても、気候風土や民族性、生活習慣などを無視した世界共通仕様などないのではと思います。
食文化と並んで住文化こそ、多様性の象徴であり、それぞれの国や地域で、相互に刺激されながら独自の発展形態が求められるものでしょう。

 

私たちの家づくりの原点は、日本の国土に建てる、なのでは?

私たちの住宅の建築場所は、日本国内です。どうも、その単純なことを忘れてしまったのが、戦後の家づくりなのでしょう。PACは、その告発からスタートしたと言えます。
今回のシリーズは、その立場に立って、日本で建てる家を間取りから考えていこうというものです。
日本は南北に長く、気候風土や生活の伝統も単純に一言で言い表せるものではありません。
特に北海道と沖縄は、日本の一般的特徴に包含されえるものではない代表的地域と言えます。
PACは、日本の気候風土の特徴と言われる、雨や湿気の多さ、冬と夏の極端な気候差、太陽の恵みの多さなど、そして同時に、日本人の生活観・ライフサイクルなどDNAにすりこまれた生活習慣・伝統などをベースに構築されてきました。
そうした意味で、北海道と沖縄での活動は控えさせていただき、本州と九州を軸に展開をつづけてきました。
具体的な間取りの話に入る前に、再度、声を大きくして、「みなさまの家は、どこに建てるのでしょうか?」と問うてみたいと思います。

 

日本の気候風土の中で必要とされる間取りは?

家づくりを検討されている大部分の方が要望されていることがあります。
代表的なものを3つ挙げてみましょう。

     1つは、木の家にしたい。
     2つは、日当たりの良い家にしたい。
     3つは、風通しの良い家にしたい。

と、いずれもがうなずけることばかりで、少しも不自然ではありません。
しかし、不可思議なことに、現代日本の家づくりでは、木の家はおよそ半分に、そして日当たりや風通しに至っては情けないくらい実現されていない状況になっています。
望んでいながら、実際は違う家が建ってしまっている、そんな奇妙な現象が普通になっています。
その背景には、様々なことが考えられますが、スタートは戦後にあるのでしょう。
田の字間取りと言われる畳の間の、融通無碍に使い回しできる空間の良さも、見方を違えれば、食寝分離されていない不衛生な空間、きちっとした個室もなくプライバシーが守れない空間と烙印を押されてしまいました。
そこから公団住宅を皮切りに、玄関から中廊下が伸び、中廊下からドアを開けてリビングや個室に入る何LDK間取りが生み出されました。3LDKであれば、個室が3部屋にリビングとダイニングキッチン、5LDKであれば、個室が5部屋にリビングとダイニングキッチンということです。
そしていつしか、何LDKは日本の間取りの代名詞になり日本中を席巻してしまいました。その結果、現在の家には「中廊下」があるのが当たり前になりました。

何LDKは「中廊下」で空間を分けて、ドアを介して個室をつなぐ間取りです。
「中廊下」は家の真ん中に伸びていますから、風通しも悪くなりますし、光も入りにくく太陽の恵みも北側の部屋には届きません。

またプレハブメーカーの台頭、建材や設備機器メーカーの躍進、地元工務店の衰退とともに次第に木の家は少なくなっていきました。

機械に頼るという風潮も日本全体にはびこり、暖房やクーラー、24時間機械換気を前提とした家づくりが、ますます、自然な風や、太陽の恵みを遠ざけてしまいました。

 

日本人のDNAにあった住まい方、間取りは?

夫婦の寝室と子供一人ひとりに個室がある欧米スタイルのプライバシーを模した何LDKの間取りは、本来、日本人の生活習慣や家族感情とそぐわないものでしょう。家族のさりげないふれあいも減り、家族がばらばらになりがちな不自然な暮らしを強いられているといっても言い過ぎではないと思います。
夫婦関係、子育て、同居する老人との距離、会話の仕方など、まったくそれぞれの民族や国によって違うことなのですから。
私たち一人ひとりの個性も、細胞の奥に潜む日本人としてのDNAが前提で、それぞれの特徴・多様性があるのだと思います。
このシリーズは、日本に建てる、日本人として住む、そんな観点に立ち返って、これからの間取りを考えていきます。

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