外張り断熱で躯体内空間の空気の流れを確保

自然素材の断熱材と吸放湿

グラスウールなどの断熱材が、雨や空気中の水蒸気を吸湿してなかなか抜けずにこもってしまい、結露どころか周囲の木材を腐らせてしまうという問題が時々新聞等で紹介されました。

また最近、自然素材系例えば羊毛(ウール)の断熱材がドイツなどから輸入されエコロジーだと紹介されています。 しかも同時に、断熱材そのものにも吸放湿性能があり壁内結露を防止すると宣伝していますが、疑問を感じざるを得ません。 今回はその問題を中心に考えてみます。

自然素材を使う場合の基本的条件

断熱材に関わらず土台などの構造材、床板あるいは添加物のない漆喰など、建築で自然素材を使う場合に欠かせない前提条件があります。 自然素材に期待される効果の一つに吸放湿性能があります。 湿度の高い時は湿気を吸い保持し、湿度が低くなるとその湿気を出して、空間の湿度を安定させるというものです。

いわゆる呼吸作用と言われるものですが、これには重要な前提条件があります。 自然素材が呼吸できる環境に置かれている、言葉を変えていえば、常に流れる空気にふれているという環境下にあるということです。 これは自然素材の断熱材でも同じです。

床や壁、天井などに自然素材が使われる場合は、少なくてもその表面は室内に露出されていますから、室内の風通しがよければ呼吸が可能となりますが、 それでも閉じきった洗面室など風通しが悪く湿度の高い所では、木材の腐れなど問題が少なからず発生しています。

ましてや壁の中などに、自然素材の断熱材を充填して使うとなると、呼吸ができない条件下ですから問題は大きいと言えます。

呼吸ができない環境に置かれた自然素材は、黒く変色しやがて腐ってしまいます。 壁の中に詰め込まれる自然素材の断熱材は、こうした危険性をはらんでいます。

さらには自然素材といえども充填断熱方式では隙間もできやすく熱橋となり、ヒートロスばかりか結露の危険性も高くなります。 当初は、水蒸気を自然素材の断熱材が吸って、見せかけは問題がないように思えますが、断熱材は閉じ込められた空間に挿入されているので、 湿気は解消されずに溜まる一方ですから、水分により熱伝導率は高くなり断熱性が下がるばかりか、結露も多発するようになってしまいます。 やがて壁の中に濡れ雑巾といった状態になり、想像するだけでゾッとします。


自然素材の断熱材を使用するには、
その吸放湿性能を生かす工法的支えが必要

端的に言ってしまえば、自然素材の断熱材は常に流れる空気にふれている状態で使われなければならないという事です。 この条件に文句なしに合致するのは、おそらくPAC工法だけかもしれません。

PAC住宅の原点は、構造の木材を長生きさせる、天寿を全うさせることです。
その方法論として全ての構造材を「流れる空気にふれさせる」という本質的な手法に立ち返り、冬は太陽熱による暖かい空気を流し、 夏は夜間の外冷気を流すというパッシブソーラーシステムを構築しました。
外張りされる断熱材は、常に流れる空気にふれている状況になりますから、ボード状の自然素材断熱材を使用すれば、その性能は健全に保たれます。
具体的には、自然素材断熱ボードの両側すなわち外面と内面に常に空気が流れる状況があればいいことになります。 PAC住宅は断熱ボードの外側に集熱通気層、内側には内壁空洞があり、どちらも空気が流れています。 自然素材断熱ボードの吸放湿性能を生かし断熱性能を保持するのには理想的環境が整っています。

PAC住宅の工法的特性は、自然素材断熱ボードの使用を十分に可能としています。 あとは、それに適した自然素材断熱ボードが開発されているかという事になります。


しかし、PAC工法の外張り断熱ボードは吸放湿性能がなくても良いのです

現在使用している外張り用の断熱ボードは、吸放湿性能がなく撥水性の高いものです。 そのため、施工中は建物を雨から守るというメリットがあります。土台などの木材に雨がかかりにくくなり、大工さんの仕事もはかどります。 また、外張り用の断熱材を隙間なく施工するというポイントから見ると、自然素材の断熱ボードはかなり無理がありそうです。 現在は、そういった事項を検討してPAC住宅は、外張り用断熱材として、硬質発泡ウレタンボードとネオマフォームを選択しています。

私達はこれまでの30年以上にわたって自然素材の断熱材を求め試行錯誤してきましたが、なかなかPAC住宅の求める性能を満たしてくれるものはありませんでした。 しかし、最近では使用可能かなと希望を与えてくれるタイプも出現しています。 次に、自然素材の断熱材をPAC住宅に使用する場合の可能性について述べてみたいと思います。


自然素材の断熱ボードをPA住宅て使うには next

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