外張り断熱の課題を克服
二次接合
シロアリ

PAC住宅は1977年から始まっています。 当時は外断熱とか外張り断熱という言葉すらありませんでした。 それどころか、一般住宅に断熱を十分施すということすら珍しい状況でした。


日本において住宅の断熱化がいち早く進んだのは北海道ですが、当時、北海道の新築住宅で木材腐朽菌ナミダタケの被害が大きな話題になっていました。 しばらくすると今度は「アトピー性皮膚炎の原因はハウスダスト」であると大問題になりました。
これらの根本原因は、当時の省エネブームです。 日本の住宅はエネルギーの垂れ流しだ、これではダメだ、住宅をとことん断熱しなければいけない、と本格的な住宅の断熱化がスタートした頃です。

断熱自体は必要なことですが、断熱化を急ぐあまり、大きな見落としをしてしまいました。 湿気の存在です。 あたかも住宅内には湿気は存在しないかの如く、進めてしまった結果が、ナミダタケの被害やカビ・ダニ等のハウスダストによるアトピー問題です。
北海道のような湿気のすくない地域ですら建物内の湿気によるナミダタケ問題が発生するのですから、その他の地域での湿気による被害は尚更です。 建物の見えない所で起こる内部結露もこのころから大きな問題として取り上げられるようになりました。

以降、官民挙げて断熱と同時に湿気対策も合わせて様々な試行錯誤が始まりましたが、そのほとんどは自社製品の立場でしか考えられていない小手先のものでした。
今でもその状況はあまり変わらないようですが、私たちは湿気と断熱の問題を根本に立ち返って本質的にとらえました。 それがPAC住宅の始まりです。

簡単に述べますと、木造住宅は常に流れる空気にふれていれば腐らない、そうであれば空気の流れを確保しながら住宅の断熱をしていかなければならないという事です。 住宅において最も腐ってはならないのは、土台や柱・梁などの骨組みです。 まさしく建物の見えない所にある重要な構造材です。
ここに発生する内部結露を防ぎ、流れる空気で木材を守るため、壁空洞を軸として空気が床下と小屋空間に流れるように断熱材を施せばいい。 そのために、柱など構造材の外側に断熱ボードを張って、柱と柱の間の空洞に空気の流れを確保したのです。

こうして、家をまるごとすっぽり断熱でくるみ、その内側は自在に空気が流れるようにしたPAC住宅の原点、エアサイクル住宅が誕生したのです。


壁の中や床下・小屋空間に常に空気が流れていれば、湿気や水分で木材も腐ることなく、しかも木材腐朽菌の発生も抑えられるばかりではなく、シロアリなども寄り付きにくくなります。

一般の住宅は、空気の流れは全く考慮されていません。 充填断熱と呼ばれる通り、空気の通り道である壁の中にグラスウールなどを詰め込む方式です。
こうした充填断熱は、空気の流れを止めてしまうという以外に、さらに致命的な欠点を持っています。 簡単に申し上げますと、断熱の基本中の基本である、隙間なく施工するという事が、現場レベルでは不可能に近い。 さらに内部結露の原因となる建築金物などの熱橋を防ぐことが困難です。熱橋を防ぐことも断熱施工の大原則です。外張り断熱であればこれらは簡単にできることなのですから。

では外張り断熱に課題はないのでしょうか。

外張り断熱は柱の外側に断熱材を張ります。 これにより素晴らしい長所を持つことができましたが、この長所は、外壁の仕上げ材を支えるという点において一つの課題を持ちました。

二次接合の課題もクリア

住宅の外壁仕上げは、モルタルやサイディングそしてタイルなどですが、これらを支える下地があります。 これらの下地は、充填断熱であれば柱に直接止めることができますが、外張り断熱は柱の上に断熱ボードがありますから、それを介して下地材が止められることになります。

断熱ボード自体には下地を支えるだけの強度はありませんから、胴縁などの下地材は、断熱材を介してその下の柱に止めることになります。 いわゆる二次接合です。充填断熱は柱に直接の一次接合ですから、それに比較して外壁を支える力が弱いと言われています。 弱いから外壁がずれ落ちる、外壁がはがれやすい、などが外張り断熱を否定するサイト等で問題提起されています。

しかしながら、二次接合については外張り断熱に伴う必然的課題ですから、当然1977年開発当初から検討され対策をしています。

PAC住宅の歴史で最初の20年間はグループ会員(FC)で北海道と沖縄を除いて全国に5000棟以上、以降は直接建て主に、設計あるいは設計施工で提供しています。 トータルで6000棟余りPAC工法による外張り断熱がなされましたが、外壁のずれ下がり、はがれの問題は生じていませんし、阪神大震災、中越地震、東日本大震災を経た今も、そうした被害は報告されていません。

この素晴らしさはPAC工法の施工精度によるところも大きいと思います。 PAC住宅はパッシブソーラーハウスです。建築的手法で太陽のエネルギー等を使う工法です。 PAC工法は在来軸組工法の良さを徹底的に活用しています。 完成してしまったら見えなくなってしまう構造部分や、下地部分の施工の工夫で自然エネルギー利用の工夫をしています。 これはとても重要なことで、見えなくなってしまう部分の施工がPACの生命線なのです。 見えない部分をいかにきちっと丁寧な仕事をするかが問われます。しかも担当以外の目でPAC工法のチェックがなされますから、自ずと、施工精度は上がっていきます。

しかも外壁そのものを集熱壁としていますので、一般的な外張り断熱+通気工法より下地の胴縁の厚さと巾も大きく、量も多い。そして厳選されたビスによってしっかりと接合されています。

住宅建築の技術は様々で、在来木造住宅は設計や工法上の自由性が高く、木造住宅を熟知してない設計士の設計や、見えない所はいい加減にという大工にかかったら、 強度的にも不安なものになりますが、PAC住宅の場合は、在来工法の良さをトータルにとことん追求して「躯体内空間の構造材を流れる空気にふれさせる」工法に至り、 その見えない所の施工の丁寧さをとことん追求してきました。

外張り断熱の課題である二次接合に対する施工法とその現場での徹底などは、PAC施工の当然の前提として、現場で丁寧な対応と、PAC工法検査の対象になっていますから、万が一の失敗もない結果につながっています。

何と言っても外張り断熱という言葉すらない時代から、真面目に徹底して追及してきたことですから、最近になって形だけ採用し失敗している所とはおのずと違うものと自負しています。

白蟻の問題も同様です

外張り断熱を徹底すると基礎の断熱も外側が理想となりますが、断熱ボードが地中に入ればそこから地中のシロアリを建物内に招く危険性が高くなります。

PAC住宅は1982年に健康住宅宣言をしました。 以降、当然ですが薬剤による危険な防蟻処理はしていません。 使用する木材と空気の流れで建物を健全な乾燥状態に保つ建築的手法でシロアリにも対処してきました。

布基礎コンクリートの断熱ボードは外側で地中に埋設されていました。 断熱ボードの下端は直接土に触れないようにセメントに埋めるなどしてきましたが、実際にシロアリの被害を受けた事例が数例あります。 隣接した山があるなど極めて湿度の高い立地状況であるとか、シロアリを誘引する木材が床下換気口近くに保存されていたりというケースでしたが、そうした数少ない例においても、その被害は軽微なものでした。 建物全体に空気が流れ、木材の乾燥度が良いという事が最大の対策になっていたのです。

日本のシロアリは地中シロアリと呼ばれ、土壌に巣をつくり、地中から建物に侵入してきますが、飛来して繁殖を続けるやっかいなシロアリがアメリカから渡ってきました。 それがアメリカカンザイシロアリです。輸入家具や建材と共に日本にやってきたのです。

アメリカカンザイシロアリの特徴は日本の地中シロアリとは逆さの性質があります。 日本のシロアリは湿気を好み大量の水分を必要としています。水分補給ラインとしての蟻道があります。
ところがアメリカカンザイシロアリは、その名の通り、乾燥した木材に含まれる水分で生きていけます。 輸入された建材などから孵化したシロアリは、小屋空間の柱や梁などの構造の木材に巣づくりをします。 こうして知らぬ間に、アメリカカンザイシロアリにやられ、しかも自分の家だけではなく、隣近所に飛んでいき、その町一帯がやられてしまっているということが首都圏でも報告されています。

PAC住宅の乾燥度は建築後何年経ってもとても良好です。 それがアメリカカンザイシロアリにとっては好都合、そんな日本のシロアリでは考えられなかった情報が飛び込んできました。 (現時点においてPAC住宅におけるアメリカカンザイシロアリによる被害報告はありません。)

それを機に、アメリカカンザイシロアリばかりかイエシロアリやヤマトシロアリなどの日本のシロアリにも効果の高い、そして健康被害を起こさない安全な「ホウ酸塩」による対策を見出しました。 ホウ酸塩は、シロアリやゴキブリなど昆虫の体内に入るとその代謝を狂わし死滅させます。 人や犬・猫などの哺乳類はホウ酸を代謝することができますし、ホウ酸塩の致死量は食塩と同じ程度ですから全く安全と言えます。

PAC工法の特性を生かした安心安全なシロアリ対策

PAC住宅の最大の特長は、「流れる空気にふれさせる」というPAC工法です。 完成して見えなくなっていても、土台・柱・梁やその他すべての構造に関する木材は、床下空間・内壁空洞・1階2階のふところ空間・小屋空間それらを総称して躯体内空間と呼びますが、 この躯体内空間は常に空気が流れています。 この空間にホウ酸を吹き込めばいいのです。 しかも水溶液ではなく、ホウ酸塩の原末を。 水溶液は15%程度の濃度ですが、原末はそのまま100%です。 その微粉末を、床下空間と小屋空間からコンプレッサーで吹き込むことで躯体内空間のすべての木材に付着します。

白蟻工事1 白蟻工事2

この手法はPAC住宅の躯体内空間が完成してからですから、結局、建物完成後の施工となります。当然、何年も入居されているPAC住宅にも可能な画期的な方法です。

しかもホウ酸塩は無機物ですから揮発して無くなることはありません、その効果は建物の寿命とともにあると言えます。

(ホウ酸の水溶液を施工中の土台など構造材に噴霧する方法も、新築時であれば可能です)

一般の外張り断熱の建物は、空気の流れる躯体内空間が存在していませんから不可能です。 外張り断熱の特性をとことん生かしたPAC工法とその徹底した施工管理があって初めて可能とした方法です。 またこれを契機に、基礎外側の断熱材もホウ酸塩を注入したタイプとし、ボードの表面処理も極めて固いカチオンで下地処理、仕上げは逆に柔軟性がある素材とし、一層安全性を高めました。 状況に応じて布基礎内部に断熱ボードを施す方法も併用します。

かくれん房・部屋の周りを流れる空気で暖めるnext

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