尾山台に住む

つくる 愛すべき木たち

私たちの家づくりへのこだわりが国産の木へと向けられたのは、今から約10年前、平成7年頃のこと。当時はPACグループの本部として、会員工務店さんを通じて家づくりを行っていた。PACの工法と広がり空間の間取りを技術の軸に、健康な住まいづくりのための自然素材などかなりこだわった家づくりをすすめていた時だ。

国産材を自分たちで探そうと思い立つ少し前、木の乾燥についてもずいぶん試行錯誤した経緯がある。低温除湿乾燥、燻煙乾燥と実際に機械乾燥した木材を使っての家づくりを実践した。乾燥機から出された木はなんとなく木のはりと言うか、つや、そして香りまで失われてしまったようで納得のいかないものを感じた。
人工乾燥への疑問を抱いたまま、木へのこだわりは山歩きから始まった。三重県の森林経営の方を訪ね、実際に山林を案内いただいた。秋田、長野、岐阜、埼玉、栃木など伝手をたどってなにしろ歩いた。
きちんと管理された良い材が欲しいという気持ちと同時に、私たちの家づくりの本質を理解してくれるオーナーとの出会いに大いに期待した。

山の管理を採算度外視して取り組んでいる素敵なオーナーとの出会い、是非使ってみたいと手で触れたしっかり年輪の詰まった、肌のきれいな惚れ惚れするような木。しかし実際に会員会社の経営者とつなぐには、あまりにも難関が多かった。グループとして取り扱うとなると、そんな量産体制が山にはなかった。従ってある程度数量をまとめて年間の最低取引量を決めてもコスト面でのメリットは出にくいとの状況であった。
反対に当時山林のオーナーと製材者との連携がうまくとれている所は少なく、丸太のまま搬送しなければならず、むしろコストはかさんだ。
国産の無垢材を入手したいという思いの中には、輸入材の山林伐採による大きな被害のことももちろん頭によぎっていた。
遠くの山から丸太を搬送することの経費、そして環境汚染を考えると決してエコロジーではなくなってしまう。製材してない丸太の状態では積む量も知れている。 結局グループを運営している時期には産直の国産無垢材による家づくりは実現しなかった。

実は会員会社さんを通じての家づくりはそれぞれの会社の経営ポリシーと対立することも多く、私たちの家づくりへのこだわりを実現できないと限界を感じていたときでもあった。
情熱的な山林のオーナーとの出会い、そして大木の林立する山の中を歩きながら本当に納得のいく家づくりを実践しようと思ったら、直接お客さまの住まいを設計し、施工しなければ無理かもしれないとの思いがますますふくらんだ。
今考えれば家づくりに最も大切な木へと真剣に目が向けられたことがグループ解散の大きなきっかけになったような気がする。

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上棟を見上げる子供たち

グループ解散から真剣に取り組んだ国産無垢材のルート。最終的に落ち着いた先は埼玉県飯能の西川材だった。距離的にもこんなに近くに、しかもすばらしい心意気のオーナーとの出会いがあった。尾山台の家を支える愛すべき木たちも飯能から運ばれた。太くて年輪がつんでいる。土台や柱そして梁など建物が完成して見えなくなってしまった所にこの愛すべき木は存在している。

飯能から運ばれた材木は丸太を選ぶ、それを一本一本製材してもらうところから始まっている。川口材木店3代目の川口社長と4代目になる息子さんの素敵な親子。埼玉県飯能市で地元西川材のヒノキ、スギ中心に製材している。家族労働が中心で数名のお手伝いさんがいる程度。それだけに、木に対するこだわりは強い、山から切り出された原木の中でも質の高いものを選び乾燥させている。漠然と感じていた機械乾燥への疑問に答えが出せた気がする。基本は自然乾燥ですると。そうした厳選された丸太の中から尾山台の家の材はつくられた。

もう一方、忘れてならない入間市の細田材木。尾山台で使う材はここに持ち込まれ加工された。細田材木は昔ながら木材の継ぎ手や仕口加工ができる。量産のプレカット工場が当り前の時代、この手づくりの本格的加工に力を注いでいる貴重な存在である。細田社長とお二人の息子さんが中心で運営されている。
こうした川口さんと細田さんのコラボレーションで、尾山台の家の太くて質のいい土台や柱そして梁などの構造材が提供された。ごく一部を除いて完成後は見えなくなってしまっているが、上棟時のあまりの素晴らしさに圧倒された感覚や、建築中の林立する太い柱の群れは今でも二人の脳裏に焼き付いたままだ。

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どんな時でも、のびのびと気持ちよさそうにしている子供たち、これも無垢の木の力!

さらに尾山台の家では、無垢材によるヒノキの板、サワラの板、栗の板などがふんだんに使われているが、これも飯能産。溢れんばかりのエネルギーでつくられてきた板たちである。その情熱の人が岡部夫妻、岡部材木店のオーナーである。
住宅に使われる板材は今でも合板がほとんどと言えるが、20年近くも前に岡部夫妻は無垢の板材提供に踏み切った自然素材の先駆者として高く評価されている。やはり、原木を集め、乾燥、加工を一貫して行っている。ご夫妻のこだわりの眼で管理されている板材に対する安心感と信頼度はとてつもなく高い。
木は生きている、こうした無垢の木を心から愛している人々の手を経てできた材料でつくられる家、ここに家づくりの原点がある。
こうしたつくり手の息遣いまで伝わってくる自然のエネルギーに溢れた愛すべき木々に抱かれた尾山台の家で暮らせる喜び、安堵感は、木の生命とともに永遠に続くと二人は感じている。

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