尾山台に住む

失敗談 その1・階段

実際に生活してみて初めてああしておけば良かったという点がでてくる。総体的には大満足の我が家、しかし些細なことも含め敢えてここでお伝えしたいと思う。
これから家づくりをされる方の少しでもお役に立てたらうれしいと、そんな思いで書きすすめたい。

まず階段から。我が家の3箇所の階段についてはすでに触れた。当初の心配をよそに子どもたちは上へ下へとおもちゃやそれこそ靴や下駄をくわえておっかけっこの要求、うれしそうに逃げ回って遊んでいる。
前述のように、1階と2階をつなぐ階段は、下の数段が幅広、真ん中あたりまで片側オープンの比較的ゆったりした回り階段だ。
しかしこの回り階段が結構物議をかわす。回り階段の場合は多少幅を広くしても踊り場をきちっととらないと大きな物は運べない。

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2階の窓からの運び出しができない場合は、唯一の動線がこの階段となる。しかも我が家は上下逆転プラン。大きな食卓や重い冷蔵庫などを2階へと上げなければならない。
引っ越し当日、さほど大きくない冷蔵庫を運ぶのに、大の大人4人が必死の思いをした。しかもまだ手摺がつけられる前のこと。
運送屋さん曰く、「新しく冷蔵庫を買い換えるとき、電気屋さん2人くらいに来てもらってもとうてい無理ですよ」ということは、随分と高い冷蔵庫を買うことになると、今から覚悟した。多少大きめのダイニングテーブルはぎりぎりセーフ。もしあと10㎝長さがあったら断念せざるを得なかった。

さて、我が家のもう一つの、1階から地下へと行く、これまた回り階段。ここでも同じ轍を踏む。買ったはいいがせっかくのワインセラーが行き場を失いそうになった。
運送業者のふたりがなにやら階段の幅やら高さのあちらこちらにメジャーをあてて苦渋顔。しまいには階段へ座り込んでの協議。
一体何がおこったやら、こちらとしては早く納まるところへおさめて欲しい、休みの日にあわせての納品、実は午後には中身のワインがケースで届く、わくわくしていたこころに何ともくらーい影が。
そこへふたりの口から思わぬひとこと。「どうがんばっても地下へは入りません、他へ置く場所はありませんか?」
ふたりで顔を見合わすも我が家にワインセラーが鎮座する場所など地下以外に思い当たるわけがない。
早、2時間余りが経過。こちらの気持ちを見通してか「持ち帰りましょうか?」
とんでもない、何とか置き場を考えなくてはと焦るこころ。
うーん、仕方ない、こうなれば何かを地下へ持っていってそこを収納場所とするしかない。そこでまた難問が。地下へ行く階段の踊り場もフラットでないことから、思いの他、移動できる物が限られる。
省みれば当初収納予定だった書庫も食器戸棚もすべて引っ越し時にあきらめたという辛酸をなめている。
ようやく候補となった整理タンス。難なく移動できると思ったこの整理タンスも小1時間かけての作業。何とワインセラーは洋服タンスと整理タンスの間に納まって一件落着。

階段における格言1、幅は広めに、人のためばかりでない、家具の移動を十分配慮に、できれば踊り場をきちっと設ける、ということになる。
さて残る我が家の階段はロフトへの家具階段である。これは物の移動等の配慮は考えなくて良いので今のところ平和そのものに、収納も出来、また飾り棚としても美しく納まっている。

ところでこの箱階段がお目見えしたのが日本では江戸も末期の頃、もともと平屋を原型とする家のつくりだったため、階段の存在は歴史が浅い。そのせいか、その位置といい、つくりといいどうもおざなりにされてきた観がある。
ヨーロッパやアメリカの階段はスクリーンや雑誌の印象のせいかも知れないが、玄関を入った大きな吹き抜けの広間の中にどーんと存在している。
恐らくこうした階段を日本でつくろうと思えば、1階だけでも30坪・40坪の住まいでなければ実現不可能と思う。
ひととき日本のプレハブメーカーが、競うように階段をからめて玄関の上に吹き抜けをつくったのも、ある意味では暗い階段から明るい階段への脱皮であり、階段のつくりを見直すきっかけになったように思う。

私たちが吹き抜けも階段も居間の中へと提案してきたのは、家族が集まる生活の中心と2階のスペースをつなぐことが第一の目的だった。
平面的なつながりの住まいから2階という階層を持つ住まいへ、そして土地の有効利用と言うこともあって最近は住宅においても3階部分や地下をつくるケースが増えてきている。
安全に人も物も移動できるという基本的役割に加え、より身体に優しく、快適に、上り下りが楽しく感じられる階段。
階段のカタチを工夫すれば、腰掛けて愉しめたり、ちょっとした鉢物や絵などがおけるスペースができる。
階段材の種類、手摺のデザインや材料の選択などによってもティストは全く変わってくる。
機能性というところから端を発した階段の失敗談、毎日必ず何回とお世話になる階段のつくりには是非ウエイトを置いて欲しいと思う。生活のつながり、そして美しい空間をつくるという視点からもとても大きな存在と言える。


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