尾山台に住む

シンプルに暮らす

シンプルライフ、なんとさわやかな言葉。そしてなんと難しい現実。ものを整理すること、いらないものを処分すること、実は時間がかかるのはこの決断というか判断にある。
結局つきつめていくと頭もこころも整理されていない自分が見えてくる。かくして、シンプルライフとは、いかにシンプルな考え方に、そしてとらわれないこころになれるかなのだと思う。
今まで何となく捨てられずにいた物には必ずその時代の思い出なり思い入れがある。そうした思い出を残しておきたくて捨てられなかったと言っても過言ではない。
大切な故人からもらった手づくりのものや、故人が大事にしていた物、そして直筆の物などはまず処分できない。
かくして物は減ることなく増え続けることになる。

家づくりを機に、シンプルライフを目指そうと一念発起。もともと何がどこにあるかわからない生活は好きでなく、少なくとも物はジャンル別に保管していた。それでも使わない物が相当混ざっていた。
引っ越し前はマンションとはいえ今の住まいより広い空間、そのせいかあまり目に付かずひとつ二つとものが増えていた。
使っていない部屋、ゆとりの収納スペース、特に造りつけなどで扉付きの収納スペース、日常生活に支障をきたさない空間、これは要注意。
置く場所がないとなると購入時こころにブレーキがかかり多少は冷静な判断が働く。冷静さを取戻してくれる要因、必要以上に収納スペースをとらないということもシンプルライフへの一歩と思う。
家づくりをお手伝いさせていただいて8割の方は新しい家にはたっぷり収納をと希望される。確かに今の住まいで納められている物と、収納からはみ出ている物を含めた収納スペースが確保できたら、スッキリお部屋も片づいて、掃除も楽になってと、いいことずくめ。
ところがそれは非現実的、実際にそれだけの収納スペースをとったら予定より相当に大きな家をつくらなければならない。
例え土地にゆとりがあったとしてもコストがあわない。しかも、もともと整理の苦手で捨てられないと言う家人がいれば数年後には収納スペースがたりないわ、ということになりかねない。

シンプルライフを目指す我が家では、プランにあたり、衣類や本をどの程度捨てられるか、特に洋服については何着くらい本当に着られる物があれば良いか、生活用品や食品のストックはどの程度が適切か、といったところから必要な収納スペースを検討した。

まずは我が家の台所回りと食生活からお話しすると、二人で楽しくつくって、ゆったり食して、片づけと掃除の楽な台所をつくろうと思った。さらに、ともすると相矛盾する機能性とデザイン性の両立を追求した。
システムキッチンは既製品を辞めてステンレスの手づくり、下の収納はキャスター付きの引き出しタイプとした。使い勝手の悪い吊り戸棚をなくすことで白を基調としたタイルの壁が美しさを強調している。大きめのシンクに蛇口は二つ設けた。
設備はドイツのミーレ社の食洗機とデザインの美しい換気扇。ハイカロリー型オープンレンジは国産品。
ミーレ社の食洗機は自然乾燥なので、乾燥機能だけを使いたいという方には不向き。換気扇はデザイン性だけでなく掃除がものすごく楽、常にきれいにしておきたい方には絶対にお薦めしたい。
我が家のガスコンロは3口、その前は4口だった。4口の時もかなり使い切っていた方だと思うが、同時に使おうと思うと小さな鍋しかおけないと言う制約があった。その点3口でもゆったりしたスペースの現在の方が使い勝手は良い。
お魚グリル、これは汚れが落ちにくく少々閉口している。仮住まいの時に使っていた、コンロと魚焼きだけのテーブル式のものは魚を焼いた後の掃除がとても楽だった。
何を優先するかだと思う。。

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台所回りで重要な床にも触れておきたい。ここは立っている時間が長い。しかも汚れやすい我が家は厚さ2㎝のソイルセラミック、簡単に言うと陶器のタイル。夏はちょっと冷たくしかもさらっと、冬はかくれん房を入れているのでふわっとしている。
心地よい場所は良く知っていて、夏は散歩から帰ってきた子どもたちがお腹をぺったりタイルにつけて休んでいる。
感触的な点でもまた掃除の楽さもまず合格。ただし、何かを落としたら、まず助かることはない。気持ちよくバラバラに砕ける。
しかしこの1年ちょっと、保存ケースを冷蔵庫へ入れるときに落した以外、毎日最低2回は出し入れしている食器を1度たりとも落していない。
落したら確実にこわれるとインプットされた脳が注意深く反応しているとしか思えない。

ここでの作業を楽しくするためには使い勝手の良いことが大前提となる。秘訣は単純で、なにがどこにあるか、そして取り出しやすい状態になっているかに尽きる。
そのためにはまず同じ類の物は決して分散しない。仕舞ったときは忘れるものかと思っていても、2箇所3箇所に保存食品が亘ると、在庫管理がしにくく、在庫があるのに買ってしまったり、賞味期限切れにしてしまったりと無駄が多い。
各引き出しに、ビン物、函物、乾物、調味料、麺類、お茶、豆、我が家はひまわりやカボチャの種・松の実・くこ・イチジクやプルーン・レーズンなど、果実の在庫が一そろえというふうに整理してある。
台所回りに必需の洗剤やスポンジ、ふきんの置き場とその在庫スペース。最初から考えておかないと大変なのがこの洗剤やスポンジ、ふきん、そしてまな板、ゴミ箱の置き場である。

あくまでも美しくということと機能性の両立を考えればである。使い勝手さえ良ければ美しくなくとも、と言うことであればふきんだってタイルに吸盤でセットしたふきんかけを付ければよいことになる。
まず、ふきんはデザイン性の良いスタンドを置いてそこにかける、スポンジや洗剤もシンクの中に見えないよう細工してもらった。
ゴミ箱はたくさん必要だったので、かなり検討した。結局、子どもの汚れ物やビン・函、燃えないごみ用は無印良品の白いシンプルな物で統一。
最も使う生ゴミは白のホーロー製、しかも使い勝手を考えてスリムで背の高い物を選んだ。いずれも外に出ていてもさほど美観を損ねずすんでいる。

キッチン下のキャビネットの二つはパンチングメタル仕上げのため通気性がある。まな板はそちらへ収納。引き出し式のキャビネットには鍋、フライパン、ざる、ボール、包丁類、お玉やへらや菜箸などと整理しておく。ようは同じ小物は小物で集めておくと使い勝手の良さと同時に追加購入の際のデザイン性の統一にもつながってくる。
そして重要なことは、この収納スペースから溢れるような買い方はしないということ。これを厳守するなら、まず機能性も美しさも損なわれることはないと思う。

我が家が生活の中心を食においているのは、単に食いしん坊ということだけでなく、オーガニックな食材へのかなりのこだわりと、趣味と実益をかねた半端でない食器コレクターであることがその背景にある。
正直、食器の収納は二人にとって第一優先だった。まず、3連の食器戸棚を2本つくった。さらに手持ちのキャビネット。箱階段の収納スペースにも食器が納められることとなった。
逆転プランの2階には食卓と椅子を除いて家具らしい家具は他にない。かくしてすべて食器のための家具と言うことになった。大切な我が家の器たちは、実はほとんどが顔の見える作家の手づくり。
生産者の顔の見える食材を友人・知人の器で食すという、こころ豊かな贅沢な食生活を送っている。友人が増えて食器も増えて、あるいは気に入って手にした、それこそ1個の器から友情が芽生えてと、ここしばらくは収納スペースの空きを頭に入れながらこうした出会いが続きそうで怖いようなうれしいような。

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増える食器の数だけ食事のレパートリーの幅が広がっていたら、と思いつつ、そこは持って生まれた天性、とりあえずは美味しい素材とすてきな食器が料理の中身をカバーしてくれている。
こと料理に関して誉められる点は、食いしん坊が故かも知れないが、朝も炊飯器は使わず伊賀鍋でご飯を炊き、おだしをとってみそ汁、野菜のバランスを考えてと、基本的なところの手は抜いていない。
夜もどんなに遅くてもつまみを数品つくり、ワインを愉しみ、最後に軽く食事でしめている。今でも素材料理が中心だけれど、この1・2年の間に、実はかなり大きな食生活の変化があった。

これまでは日本酒一辺倒だった。つまみは当然のように和食となる。ところが美味しいオーガニックワインとの出会いから、身体がワイン党になってしまい、食材も和にイタリアンメニューが加わってきた。
かつてオリーブオイルたっぷりの料理やパスタは太ると自認していた。ところが実際はそうではなかった。
一日最低2回は体重計に乗る習慣のあるふたりがイタリアンメニューを加えても体重が増加しないと言うことをまさに身をもって体験した。このことも、食生活の大きな方向転換を決定づけることになっている。
そのうちノウハウを身につけて、イタリアンの簡単素材料理などと、いくつかご紹介できるよう、今しばらくは試行錯誤の毎日である。

最後にキッチンのカタチはL字型の対面式とした。そして大きな食卓は食の場でありくつろぎの場となっている。
あまり使われていなかったソファーセットはお決まりのように処分となった。マンションの無機質な広いリビング空間にはふさわしかったが、今の空間には浮いていた。
空間的なゆとりの問題だけでなく、内装の素材感がナチュラルな物になると、マホガニーやウレタント塗装のブリティッシュな家具は似合わない。
今の食卓も椅子も無垢のウォールナット材で仕上げもオイルのみ。上下逆転プラン、2階の食卓からの風景はまさに借景、美しいお隣の庭、そして少し離れた神社の森。
お気に入りの大テーブルと座り心地の良い椅子、大きな吹き抜けの天井空間、そして無心の愛で接してくる子どもたちとともに幸せライフを満喫している。
一挙一動クローン人間のごとく同化している我がパートナーの存在は当たり前として。

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