尾山台に住む

かくれん房

この冬をかくれん房で過ごしている。他の暖房器具はまったく使っていない。かくれん房については他の項でもちょこちょこ触れているが、これはPAC住宅の構造と機能を生かした低温輻射暖房システムである。

低温輻射暖房といえば普通は床暖房のことであるが、かくれん房は同じ低温輻射暖房でもその内容はずいぶんと違う。床暖房は、家中の床すべてに設置することもできるが日本ではほとんど部分的設置である。そのため低温と言っても、かなり高い温度帯での使用が一般的である。また、床面のすぐ下に設置されるため熱がダイレクトに伝わり、いわばホットカーペット的暖かさである。

一方かくれん房はシステム上必ず家一軒まるごと低温輻射暖房になる。しかも床面だけではなく天井面も壁面もその対象となる。また、直接暖める場所は土間のコンクリートで床面までは60㎝程度はあり、なおかつ床下空間と内壁空洞そして1階と2階のふところ空間さらに小屋空間と連なり、そこに空気が循環するため、土間面の温度はこの一連の空間に発生する空気の流れにのって建物全体を巡ることになる。いわゆるPACのエアサーキュレーション効果により建物の隅々までくまなく暖かさが運ばれ、家の中どこに行っても同じような温度となる。尾山台の家では全てが20℃から22℃程度になるように使用している。

しかも、その暖かさは床暖房のようにダイレクトではなく、もっとはるかに柔らかな間接的暖かさであり、1階も2階もロフトもまったく同じソフトな雰囲気である。
これは住んでみてあらためて相当に画期的なことだと実感している。これまで日本人が体感したことのない空間と言える。なにしろ家中の床も壁も天井もほとんど同じ温度から醸し出される快適さなのだから。

こうした身体でしか味わえない体感を言葉で伝えるもどかしさ難しさを感じながらも、毎日の生活を表現することで少しでも想像していただければと思う。読者のインスピレーションに期待するところである。

まず、家に居るときのスタイルは、時間にかかわらずジーンズに長袖のコットンシャツと極めて軽装である。もちろん常に素足である。
ベットで寝ているが、冬でもオーガニックコットンの毛布と夏がけ布団で十分。寝姿は男は衣服をつけず、女は半袖のTシャツである。朝起きるとこの格好でうろうろして身支度をするが、まったく寒さは感じない。男は30分以上そのままであるが快適である。
この暖かさの質がまた良い。いわゆる暖房機器の人工的な風やむっとした温感は何もなく、極めて自然である。春や秋のもっとも過ごしやすい日に外に出て大気に包まれる感じ、それは寒くもなく暑くもない爽やかさ、意識することのない空気のおいしさと言える。

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アプローチの水盤に氷が張る日も多くあったが、そんな朝、ゴミ捨てに出る時もコートを羽織ることなく軽装のままでもOKであった。身体に暖かさが蓄えられているため短い時間であれば寒さを感じずにすんだということだろう。
子ども達と散歩する時も同じ、半コートやジャンバーを軽装の上に着るだけで十分である。朝晩30分余りの散歩であるが後半はそれでも暑くなる、帰って玄関に入ってあわてて脱ぎ捨てる。時には上のシャツもとる。
また、子ども達のおかげで雑巾がけは日常であるが、そんな家事に一所懸命になるとうっすらと汗をかく。しかし、汗が引くときに感じる寒さはない。
尾山台の家は逆転プラン、2階は一つながりの空間で台所空間、リビング、ロフトがある。トイレはドアがあるが、ここの体感もまったく変らない。
高台の端っこにあるため東と南の窓からは太陽光が十分に採れるが、残念なことに週一回の休日以外は外付けブラインドを下ろしているため、窓からの集熱という意味ではずいぶんと損をしている。
晴天の休日、太陽光が入るリビングはとても気持ちがいい。子ども達はのびのびと日向ぼっこ。2人は日差しと借景を楽しみながらワインでランチとしゃれこむ甘美なひとときとなる。
ロフトの上部にPAC専用のスーパー越屋根換気口を応用した室内自然換気口が付いているが、真冬でも半分程度開いている。夏は室内の窓を開けることで自然の風が吹抜けるが、冬、窓は閉じられ吸気がない状態となるため気流は生じない。 温度差による換気がおこなわれているがロフトにいても上からの冷たさを感じることはなく快適。

また、PAC住宅はかなり気密性がいいのだが、この部分で常に外に開放されているため、室内の空気のバウンド状態が発生せずドアなどは何の抵抗もなく速やかに開閉する。
尾山台の家ではこれ以外の室内換気として、1階の浴室と洗面に換気扇が一台づつ、あとは台所の換気扇と実にシンプル、室内自然換気が十分に成立することを証明している建物である。当然、室内の空気も常に爽やか。

かくれん房の発想はPAC住宅がスタートした時からあった。最初の試みから20年程度、いろいろ試行錯誤の上現在の形となった。使われ方もすまい手によって差があるが、20℃前後でというコンセプトは最初からのものである。実際に住んでみて、 家中どこでも20℃程度という空間は想像していた以上に素晴らしいというのが本音である。是非、多くの家族に味わってもらいたいし、やがて日本の暖房形式の標準になると予測している。

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