尾山台に住む

3つの階段

我が家には、それぞれ個性豊かな、かたちも材種も異なる階段が3箇所ある。一日に何度も行ったり来たりするしんどいはずの階段の上り下り、我が家では楽しい生活のリズムを刻んでくれている。
1・2階をつなぐメインの階段は下の数段幅が広く、片側はオープンの比較的ゆったりした回り階段。

尾山台に住む 尾山台に住む 尾山台に住む

下の3段が広幅になっていて開放感を
与えている

白い漆喰の壁・天井とアイアンの手すり

階段吹抜けの上に天窓がある

ちょっとした吹き抜け空間とからめ天窓からの光が1階フロアーまで注がれる設計となっている。知人のアイアンデザイナーがごくごくシンプルな手摺をつくってくれた。白い漆喰の壁・天井とアイアンは不思議なほど繊細さを競い合っている。
その空間に天窓からの光が漆喰壁に帯状に走るさまはまるでパティオの様だ。

この階段を中心に玄関と2階のスペースを夜は子どもたちに開放している。東の窓から光が差し込む頃には、子どもたちが寝室の前に集まって今か今かと目覚めを伺っている。
ドア越しの荒い鼻息を耳にしながら洗面で朝の支度をすませる。ドアを開けたとたんにまだ子どもの甲斐犬、カイが17キロの体重で思いっきり抱きついてくる。彼女の頭突きであごを痛めること何度か。すごいパンチだ。
カイの横では柴犬のももが得意のくねくね踊りをしながら身体中でよろこびの表情をあらわしている。
一匹狼的存在の同じく柴犬のピピは悠然と2階で待っている。アップップの一声でカイとももが怒濤のごとく2階へと駆け上がる。
階段生活初めての子どもたちが、けんかしながら落っこちて怪我でもしないかと当初随分と心配した。
絡まり合って上り下りしていても、また数段上から下へ飛び落ちてドアに思いっきり身体をぶつけてもこちらの心配とはうらはらにケロッとしている。丈夫なものだ。

反対に我が家の唯一の男性は2度、階段から落ちている。一度は手に抱えていたものにこころを奪われて、もう一度は照明をつけようと気がちっていて、との弁である。
心配が必要なのはどうやら2本足の我々のようだ。子どもたちの牙と爪から少しでも木を守ろうと、階段は桧より少し固めのタモ材とした。しかも蹴込み部分にはモザイクタイルをあしらった。
キズなどと生やさしい心配ではすまなかった。なんと夜中にかじって一部木を食ってしまった。予想をはるかに超える悪さである。それでも無垢の木はかじられた部分にサンドペーパーをあて、オイルフィニッシュを塗っておけば何とかなる。

遊び疲れた子どもたちが心地よさそうに階段の途中で寝ている。起きているときは手に負えない悪ども、怒鳴りながら子どもたちを追いかけ回している鬼のような顔はどこへやら、幸せな気持ちがおだやかな顔にしてくれる。

尾山台に住む 尾山台に住む

2階リビングから階段を見下ろす

蹴込みはモザイクタイル。

1階から地下へ行く回り階段は、階段があることのわからないようなつくり方になっている。別に隠す必要もなかったし、パニックルームなどをつくる予定でもなかったのだけれど、ふたりとも理由もなく、それでも隠したいという気分は一緒だった。
完全に壁に見えるようにつくりたかったけれど、結果として収納スペースかと思って、扉を開けると階段、ということになった。

ここは、常時子どもたちが使うこともなかろうと、階段材を桧の集成材にした。集成材と言っても間伐材利用のエコ商品である。足触りが違う。とてもやわらかく優しい。我が家で最も地味な存在、そして人のぬくもりを感じさせてくれる階段だ。

尾山台に住む
尾山台に住む 尾山台に住む 尾山台に住む

地下室らしいムードで写真は撮れているが、実際はもっと明るく、
暗い雰囲気はない。しかも、かくれん房でポカポカ。

地下室への階段。扉は折れ戸になっていて一見収納の雰囲気。地下室の壁・天井も漆喰塗り。


最後にリビングとロフトをつなぐ家具階段、いわば箱階段である。ここもアイアンの手摺金具がアクセントとなっている。
ここの階段については設置式とするか可動型にするかに始まって選択肢が多かった。果ては東側なので窓をつくろうかなどと、いろいろな思いが巡った。
箱階段との提案に気持ちが傾いたのは空間が楽しくなりそうだなと思ったこと。そしとほとんどワンルームに近い2階のフロアー、何もかも見渡せる空間の中で収納スペースが広がることも大きな魅力の一つだった。

基本的にあまり物を出して生活するのは好きでない。そこへもってきて手の届く物は何でもくわえて持っていく子どもが片づけ魔に拍車をかける。
ダイニング回りの細々した物たちが納まりほっとしている。普段それほど使わない箱階段、好きな陶器やガラスのベースがいくつか置かれている。

実はロフトは子どもたち禁制の場とした。何故ならここは我が家の唯一の畳の間。3畳分の琉球畳が敷かれている。瞑想ルームと名付けし、実は昼寝の場といったところかも知れない。
これまで子どもたちのだれも箱階段を昇る挑戦をしなかったので安心していたが、つい先日見てしまった。ももが3段4段と昇って、下りるときは下まで一気。さすがジャンプの女王の威名を持つ親から生まれた子だ。見ていてハラハラした。
もともと階段としての機能性よりは家具としての機能なりデザインを優先させているわけで、踏面も狭く蹴上げも高さがある。
たかたかと登るは良いが手摺を使えない子どもはきっと上から転がり落ちるしかない。 人間がいないときに解放するときはガードが必要かも知れないと密かに思っている。
また過保護と言われるかも知れないが。

箱階段を含め2階の食器戸棚、食卓、椅子、デスク、窓枠などなどをウォールナットクルミの木で統一した。箱階段の手すりも。
少し色味のある落着いた材だ。引き出し、開き戸つきの収納、そしてオープンな飾り棚の構成でつくられている。和の伝統を持つ家具も、つくりかたによっては随分と違うイメージを持つ。上に居室があることを隠すためにつくられたとされる箱階段、我が家では2階の中心にデーンとおさまり大きな顔をしている。
階段は家の中で必要不可欠な、そしてかつ結構な存在感を持つものだ。それだけに居住空間へ与える影響は大きい。
上下階をつなぐ、生活をつなぐ、人が物が移動する、光も風も通り抜ける。機能性、安全性そしてデザイン性と階段に求められる要素は複合的だ。
そしてさまざまな工夫が活かされる場でもある。我が家の3箇所の階段、エピソードを生みながら楽しい歴史がつくられていくことだろう。

尾山台に住む 尾山台に住む

ロフトへの家具階段。
今のところ子ども達は上れない。

手すりは家具階段と同じウォールナット。
金具はアイアンの手づくり。

前のページへ戻る