尾山台に住む

建築的手法によるセキュリティ原稿作成日:2004.3

尾山台に住む
右下に見える駐車スペースから20メートルほど細い通路が続いて建物がある。これは2003.6頃の外観、もうすぐ他の建物でほとんど見えなくなる。

尾山台の家は高台の端にあり、門から細長い通路を20メートルほど入る。住むには落ち着いた環境であるが、周囲に家が建ってしまうと、道路からは見えない袋小路でもある。泥棒が喜びそうな敷地と言えるし、このあたりの家は一度は空き巣の被害にあっていると聞いて、設計の優先課題にセキュリティも取り上げた。
警備会社の機械監視システムも導入したが、それ以上に重視したのが、建築的手法によるセキュリティである。尾山台の家は健康に住まうというコンセプトであるが、そのための手法も機械設備に頼る前に、設計や工法、素材など建築的工夫で行うことを原則としたPAC住宅である、泥棒などの対策も建築的手法でということは当然の成り行きとなった。
泥棒は行き当たりばったりに侵入するのではなく、事前に十分下見をするという。どこから入るか、どの時間帯がいいのか、単に建物の観察ばかりではなく家人の行動パターンまで見ているという。泥棒にとって安全な場所、安全な時間に仕事を手早くかたずけるための段取りである。
当初、周囲に家は建っていなかったこともあって、外から見たときに建物の外観で中の様子、間取りの見当がつかないデザインにした。あそこがトイレ、台所、浴室と簡単にはわからない外観である。そうした結果、デザインもすっきりとした外観になった。泥棒対策以上にこのシンプルな外観が気に入っている。一言でいえば窓のデザインと配置による。
泥棒はどこから入ってくるのか。壁をぶち破るなどの荒手口ではない。ドアや窓などの開口部からである。それならば、泥棒が入れない工夫を開口部に施せばいいとなる。

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西側

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北側

完成直後の様子。今では前面に建物が建ってこのアングルでは見えなくなってしまった。

尾山台の家では2つの考え方をとった。1つは、人が通れない大きさにする。2つは、それ以外の開口部は簡単に破壊できない様にする。と当り前のことであるが、意外とこれまではやられてこなかった。

窓の巾を狭くして人の頭が入らない大きさにした。その分縦に長くして、明るさや通風などを確保する、こんな単純なことであるがほとんど見受けない手法である。尾山台の家のアルミサッシは全てこの考え方に基づいた。縦の長さも2種類に統一しデザイン的にもスッキリをねらった。結果は大成功と思っている。明るさも十分であるし、通風は抜群である。浴室などは、この細い窓を4つ連ねるなどの工夫も取入れた、入浴後などの換気に極めて便利である。

巾の狭い窓の種類はいくつかあるが、尾山台の家ではジャロジー窓を採用した。横に細長い羽状のガラスが重なり、動くタイプである。ジャロジー窓の欠点は、隙間ができる、外から簡単にはずせると、省エネ的にも防犯的にもダメな窓であった。巾を狭くすることで防犯的には問題解決。そして省エネ的にも大幅に進化した。羽が2枚になり閉めると空気層ができペアガラスと同等の省エネ性を発揮するタイプが登場した、もちろん気密性もよくなり隙間風など入ることはないと工夫次第では良いことずくめである。一方、ジャロジー窓の長所は、開く角度が自在であること、すなわち、換気量の調整ができ、透明ガラスでなければ視線のカットも自由になる。開き具合の調整で中は見えない、そして換気はしている。 この特性で、就寝時や外出時にも安心して開けていられる。

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4連窓にしている。浴室・洗面などに極めて便利。右2枚の写真は内側から見ている。

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人の頭が入れない巾のジャロジー窓。
2枚羽で気密断熱性に優れている。
西日よけの縦の庇をつけた。

2枚羽の様子

じぁ、大きい窓はどうするのか。これも単純に割り切った。まず簡単には割れないガラスにする。いわゆる防犯ガラスと言われる合せガラスにした。それも小型ハンマーでも破壊にかなりの時間を要するレベルとした。サッシの開閉も大きなハンドルタイプとしたので、仮にガラスを破壊するにしてもかなり大きな面積をしなければならず、泥棒をあきらめさせる要素になる。

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左側が90ミルの防犯用合せガラス。
ペアガラスになって省エネ性もかねている。

この大型ハンドルをグルリと回さなければ窓は開かない。

次に、夏の日射遮蔽もかねて開口部の外に付けるブラインドを設けた。羽が電動で自在に動き、光や通風を調整できる優れものである。かなり頑丈なもので、網戸にして就寝しても十分な安心感がある。外出時には、必ず、このシャッターを下ろし羽を開いて採光できる状態にしておく、もちろん、サッシはしっかりと閉じロックをする。二重三重の構えである。
1階も2階も、同じ考え方で開口部は構築されている。はしごを使って2階の窓を狙っても、ごくろうさまでした、となる。

玄関のはめ殺しの開口部もこの合せガラスにした。同時に、意匠性と心理的安心感もかねて、内側にスチールの飾り格子を入れた。アイアンクラフトのデザイナーによるものであり、美的にも十分満足している。
玄関ドアは、断熱気密性も十分にあるがっしりとした木製とし、採光のための開口部はなしとしたが前述したはめ殺しの窓で十分に明るい。ドアの鍵もツーロックとした。これは今では当り前のことであろうが、工夫したのは、内側からも鍵で開けるということである。いわゆる開閉のためのツマミ、サムターンをなくし、より防犯性を高めた。最近、話題となったサムターン回しはしたくてもできないことになる。これらの対策で開口部をまず防備した。

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外付けブラインド。防犯、日射遮蔽、目隠し、通風と多機能である。

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玄関の明かり取りの窓ははめ殺しで90ミルの合せガラス。
内側にスチールの飾り格子がある。

 

サムターンがなく鍵で内側も開閉する。

もっと安全にと泥棒が開口部まで近づく前にあきらめる工夫をした。PAC住宅は、雨などの跳ね返りで建物が汚れないように、コンクリートのたたき、犬走りを建物周囲に回している。尾山台の家では、この犬走りをコンクリートではなく、小粒の砂利とした。これは皇居に敷き詰められた玉砂利と同じく、音による防犯対策となる。泥棒も建物の回りを歩くたびに音がしてはたまらないだろう。
ちなみに砂利の下にはコンクリートの犬走りがきちっと打ってある。これは防蟻対策でもある。

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建物周囲の犬走りは小砂利。歩くと音がする。


もう一歩すすめて、建物周囲までも来たくない気にさせるにはどうしたらいいのだろうか。
それは、光と記録である。インターフォンとフラッシュライトのどちらも映像と音声を記録できるタイプとし、建物の周囲に配置した。これは機械的対処でもあるが建築的手法とも言える。姿形がライトで照らされ、さらに記録もされているとなれば普通はあきらめる。

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映像と音が記録されている。

そして我家の最終兵器。3人の子ども達である。柴2人、甲斐1人。こんなに心強い身内が毎日24時間建物の中に控えている、我々2人が帰宅して車を入れた瞬間、歓迎の挨拶を大きな声でしてくれる。20メートルも離れているのに。在宅時は、実はインターフォンはいらない、その前に子ども達が教えてくれる。でも、防犯のために犬を飼っている訳ではない。あくまでも大切な子ども達なのだ、泥棒対策では決してない。

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