尾山台に住む

夏、多摩川の風を家一杯にとりこむ

尾山台の家は、夏、多摩川から風が吹き上げてくる。この風と上手につきあいたいと考えた。汗まみれになって遊んだ子どものころ家路に向かう途中で受けた爽やかな風の流れを思い起こした。そんな自然の呼吸を家一杯にとりこみたい。
柴と甲斐の子ども達は暑さに弱い。仕事の関係で散歩は朝と夜なので問題はないが、昼間子ども達だけで留守番するときに過ごしやすくしてあげたい。マンション時代はクーラーを付け放しにしていったこともあったが、せっかくのPAC住宅そんなことはしたくない。
PACの工法を前提としそれを一層活かすために様々な工夫をしてみた。
まずは風通し。多摩川の風で家一杯にする工夫を最大限してみた。当然オープンな間取りが前提。シンプルな間取りの項でもふれたが、尾山台の家はドアや引戸が少ない。この建具を開けておけば1階2階ロフトとひとつながりの空間になる。建具もすべて天井までの高さとし多摩川の風の通り道を大きく開いた。子ども達が留守番する玄関から階段室の吹抜けを通じて2階へそしてロフトへと風は吹抜ける。子ども達のいない空間の風通しも抜群だ。そんな間取りにした。

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多摩川の風が吹抜けるシンプルな間取り


風が通るためには窓は開いておかなければならない。どうしたらいつもオープンにしておけるのか。開いていても人が通れない雨が吹き込まないが安全と安心の条件となる。そのための工夫を文字通り素直にしてみた。窓の巾を人の入れない大きさとし、面積をかせぐために縦に長くとり、開き具合の調整が自在となるジャロジーとした。不透明なガラスとし斜め下にジャロジーを開いておけば目線も防げるし、雨も吹き込みにくいといいことずくめだ。

尾山台の家のアルミサッシは全てこのタイプとなった。寝室、寝室収納、洗面浴室、トイレ、玄関、階段室、リビングと徹底した。その他大きな開口が必要とされる所は防犯ガラス入りの木製建具とした。ロフトにこのジャロジーという考えもあったが、冬の室内自然換気も考慮し、ロフトの天井に大きな換気ダクトを設け、棟部分のスーパー越屋根換気口とつなげるという新しい試みを採用、こうして一日中、多摩川の風を受入れる準備が完成した。

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寝室のジャロジー内側

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寝室のジャロジー外側

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寝室のジャロジー窓内側に
はすだれ戸とふすま戸がある

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寝室のジャロジー窓内側のふすま戸

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西側の細巾縦長ジャロジー窓

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左側が室内自然換気用の
スーパー越屋根換気口

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右側が室内自然換気用スーパー越屋根
換気口へのダクトのガラリ

夏の日差しは厳しい、次に必要なことは窓から日射を入れないことだ。尾山台の家は高台にあり東側はひらけ南側はお隣たちの庭と恵まれた立地だがその分夏の日差しもきつい。北側と西側にはまもなく隣家が出現するが、真南から少し東に方位がふれているためピーク時の西日を受ける。天窓も北側の屋根に3つ、西側に1つある。
日射遮蔽は窓の外側ですることが原則、これに則っていくつかの工夫をしてみた。
夏は早朝から東の日差しがおそってくる。尾山台の家は逆転プラン、2階リビング東側には大きな開口部が1つ、1階寝室には縦長ジャロジーが2つ、1階寝室収納に真四角の小さめな窓が壁上部に2つある。1階の窓からはさほど強烈な日射は入らない、問題は2階の大きな開口部、ここを放っておいては早朝から熱地獄は目に見えている。そのため外側に、電動式のブラインドシャッターをつけた。開閉は当然として、ブラインドの羽角度が自在に調整できる点をかった。
南側に目を転じると、2階リビングに大きな開口部が2つ、1階寝室にやはり大きな開口部が1つある。この3ヶ所にも、前述のブラインドシャッターをつけた。アルミ製であるががっしりとした構造でデザインも悪くない、風通しの確保と同時に防犯上の安心感も得られる。もっとも尾山台の家では、ジャロジー窓は不在時でも開け放しておくが、大きな開口は必ず閉じてブラインドシャッターも下ろす、夏はブラインドの羽を調整してきつい日差しをカットするという使い方をしている。サッシのガラスは防犯ガラスであるので安心度はかなり高い。この東側と南側4ヶ所のブラインドシャッターで徹底的に日射遮蔽をしている。

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東側と南側の4ヶ所の窓には外付けのブラインドシャッターがつく。
開閉自在、羽の角度も調整できる。防犯にもうってつけ。

寝室のブラインドシャッター。
羽を全開にした状態で閉じられている。

西側には細巾で縦長のジャロジー窓が1、2階にそれぞれ5ヶ所づつある。1階はさほど心配はいらないが2階には対策が必要となる。窓の形状が特殊ということもあってなかなか対策も難しい。幸い、方位が東にふれているためピークの西日は真正面からではなく建物の右側から来る。そして窓は細いということで庇を、窓の右側縦につけることにした。こうして西側の日射遮蔽も何とか対策ができた。

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西側には10ヶ所の細巾で縦長のジャロジー窓がある。西日の当る2階の窓には、縦の庇が設けられ、ピーク時の西日をカットしている。

天窓はどうする。対策は同じ、窓の外側で日射遮蔽、それを徹底させようと、西側ばかりか北側にも外付けの日射遮蔽シートを取り付けた。それにしても最近の天窓の性能はいい。気密性の高いペアガラスであるが中は乾燥空気ではなくアルゴンガスが封入されている、また、真夏の日射遮蔽もシートをしておけば85%もカットしてくれる。遮蔽シートも半透明で真っ暗になることはなく、むしろ夏の強烈な日差しを緩和してほどよい光となる。天窓はすべて開閉式なので、在宅時にはオープンにして通風を計ることができる。

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北側キッチン空間の2つの天窓。真ん中の白い壁の後が冷蔵庫置き場。左側がデスクコーナー。
右側は作業スペース。

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西側階段吹抜けの上の天窓

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北側ロフトの天窓

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デスクの下でくつろぐ子ども達

PAC住宅は夜間の外冷気を基礎や土間のコンクリートに蓄熱させ内壁空洞の通気を介して天井や壁・床面を涼しく保とうとするシステムであるが、東京は熱帯夜も多い、熱帯夜では冷気はとれない、それを補完しようと尾山台の家では井戸水で土間コンクリートを冷やす工夫をしている。冬は「かくれん房」として使う回路に温水の代わりに井戸水を流す試みである。井戸水が冷たければそれなりの効果は期待できるのだがと実験的に採用してみた。
同時に東京は湿度も高い。尾山台の家は相当に吸放湿する材料を使用しているが、水蒸気を大量に含んだ外気が流れこむ日はやはり湿気に悩まされる。そんな日のために、エアコンを2台設置した。一台はロフトから2階空間へ向けて、もう1台は寝室収納から寝室へ向けてと間接的な使い方である。クーラーは使用するつもりはなくドライ回路での除湿を期待してのことだ。
かなり万全な建築的手法と自負できる。あとは住んでみてのお楽しみ。暮らしのレポートは次の項で。あっ、忘れてた。シーリングファンもつけてます。

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地下室にある井戸。
庭の散水と夏のかくれん房に使われる。

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ロフトから見下ろす。
シーリングファンは夏場に大活躍。

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ロフト上部につけられたエアコン。
夏場、ドライ回路で除湿専用に使われる。
2階全体をまかなう。

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寝室につながった収納室の一番奥の壁にエアコン。
やはり夏場、除湿専用に使われる。寝室に直接風は届かないので、とても気持ちいい。

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