尾山台に住む

暖かさの質 その3

暖かさの質は温度ばかりではなく建物を構成する材料が大きく関係している。床や壁、天井などの材料で、暖かさの質は変る。なかでも直接ふれる床の影響は大きい。
尾山台の家は、計測器でみると家中ほとんど同じ温度である。そこに素足で暮らしているが、空間には温度感覚の差がある。温度計では同じでも皮膚感覚がちがうのである。その差が刺激となり、これまた心地良い。素足で歩く喜びを身体が感じている。
玄関から洗面・トイレ・浴室は磁器タイル。寝室と納戸・書斎スペースは桧。階段はタモ。リビング・トイレは栗。キッチンは土系タイル。ロフトは畳、ロフトへの家具階段はウォールナットと我家では7種類の材料に足が触れている。あっと忘れてた、地下室はサワラの床・天井、地下への階段は間伐材の桧である。
桧やタモ、栗やウォールナットなどの木はもちろん無垢材で、仕上げは植物オイルのみ。土系タイルは木と同じく呼吸をしている。水よごれに優先した磁器タイルだけは残念ながら呼吸はしない。ちなみに畳は、琉球畳。

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寝室の桧の床板。光のかげんで色が違って見えている。

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玄関の磁器タイル。 たたきの部分だけではなくホールから洗面室まで。

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階段はタモ材。桧と比べると堅い感じがする。

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二階リビングの栗の床板。やはり光のかげんで色がちがって見える。

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二階リビングの栗の床板と土系タイル。(写真左)
ソイルセラミック(土系)タイル(写真中・右)。

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ロフトの琉球畳

これらの材料の温度は20℃から23℃前後で安定的に推移している。しかし、ふれるとその感じはかなり違う。柔らかくふわっとした温もりの桧の床。栗の床は、ややかたく爽やかな触感。タモはきりりと緊張感を与える。ウォールナットはタモよりもしなやか。土系タイルは素足にピッタリなめらかな温もりさえある。磁器タイルはさすがに硬質な感じはあるが冷たくはない。畳は懐かしい感触。
尾山台の家は、犬たちと同居する家。材料選びは彼女らを相当に意識した結果であるが、その選択は我々人間にもドンピシャとなった。犬にいいものは人にもいいと言うことか。
ちなみに柴と甲斐の子ども達が入れない場所は、寝室空間、洗面・浴室スペース、地下室とロフトである。玄関からワンルームの二階、20坪あまりを自由に動き回っている。子ども達がふれる床材は磁器タイル、タモ、栗、土系タイルで、桧と畳には触れていない。彼女らが残念と思っているかは定かではない。
話を人間にもどすが、今回の材料選択は大いに成功したと思っている。

質の高い暖かさを得るのに適材適所であった。質の高い暖かさとは、用途や気分に合った暖かさとも言える。

寝室は一日の疲れを癒す空間、桧の床のソフトでなめらかな感触とそのなんとも柔らく穏やかな温もりは、足をふみいれた瞬間、こころと身体の緊張感をほぐし、ほーっととろける感じである。
尾山台の家は逆転プラン。寝室は玄関と洗面スペースに連なり、そこは磁器タイル。桧の床とは対照的に、我家の素材では最も硬質な触感である。玄関は6畳近く、子ども達のケージが3つ置かれている。子ども達のハウスであり、留守番場所でもある。粗相もありえるので水がかかりやすい洗面や浴室とつなげ磁器タイルとした。子ども達の名誉のため申し添えるが、彼女らはお行儀が良く、必ず床に敷いた新聞紙の上で用を足す、それが時々はみ出てしまうという不運があるのだか。もっとも不運と感じるのは彼女らではなく人間どもなのであろうが。
また話が子ども達にいってしまったが、硬質な磁器タイルは冷たくはないが一種の緊張感を与える。その床が、緊張感をほぐす寝室の桧の床と連なっている。このメリハリが良い。もちろん、桧の床と同じ温度であるので温度差によるショックではない。触れた感覚の差による違いである。
1階のトイレはオープンで洗面室にある。家具で仕切ってはあるがドアはない。床は磁器タイル、このトイレに、朝、男は半時間ほど衣服を着けずにすわり読書もしている。洗面室の温度はやはり20℃程。母胎の温もり的寝室から、磁器タイルの感触で少し緊張を取り戻し、トイレに座り1日が始まる。1日の始まりに磁器タイルの触感が役立っている。浴室の床も磁器タイルであるが、残り湯の温度で洗面よりも暖かい、浴室であるだけにこの暖かさも心地良い。
階段を上がってリビング。階段はタモ材である、広葉樹であるため針葉樹の桧よりも堅い。もちろん磁器タイルほどではないが、その硬質の温度感が若干の緊張を呼び起こす。階段で気を抜いてはケガのもと、階段材そのものが注意を喚起する、これぞバリアフリー。
リビングの床材は栗。同じく広葉樹であるがタモよりは柔らかく感じる。当然その分温かくもある。桧と比べるとやや堅く少し冷たい。もちろん計測器的には同じ温度であるのだが。
男はよくこの栗の床に寝っ転がる。子ども達と遊ぶためであるが、その遊びもしばらくすると子ども達にあきられ一人で放って置かれるが、寝心地が良いせいか時にうたた寝をしている。ジーンズとシャツ一枚そして素足で。
このリビングの栗の床に段差なしでキッチンの土系タイルが連なる。厚さ2㎝、磁器ではなく陶器のような優しいタイルである。このタイルほど素足に適したものはない、なめらかで柔らかい、そして温かい。素足での台所仕事にピッタリである。男は、このタイルにもよく寝転がっている、違和感はない。リビングの床にも適していると思える。
瞑想ルームと名付けたロフト空間、琉球畳と杉板。畳の感触は皆さんご存じの通り。瞑想転じてうたた寝となる。建物の最上部であるが、温度は20℃前後と他の空間と同一である。
長々と自慢話のようになってしまったが、決してそうではない。
材料の質が温度的体感に違いをもたらすことを思い起こして欲しいと思い、くどくなってしまったようだ。ポイントは、材料の温度が同じでも感じる温度は違うということ。この違いを上手に利用して適材適所に用いること。それができれば、「質の高い暖かさ」に大きく前進する。
暖かさの質には湿気も関係している。次回はそのお話。(つづく)

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