尾山台に住む

暖かさの質 その1

急に寒くなってきたせいか、住まいの暖かさについて考えさせられている。暖かい家と言っても、その暖かさにはずいぶんと質の差があるのではと感じている。我家はPAC住宅、かくれん房も設置されている。

かくれん房とは基礎の土間コンクリートを25℃から30℃程度に暖め、PAC(パッシブエアサイクル)の空気自然循環にのせて、建物全体の床面や壁面そして天井面から柔らかで均一な暖かさを提供するユニークな低温輻射暖房システムで、そのマイルドな暖かさは床下空間や小屋空間を内壁空洞で連通させた見えない空間(躯体内空間)に循環する空気を均一に暖める間接暖房に由来する。

と難しいことはさておいて、

1週間に1度の休日。朝寝を楽しみたいところであるが、子ども達が騒いでそうゆっくりとはさせてくれない。それでも何とか子ども達をなだめつつ8時近くまでベッドにという幸せ感もつかの間、エスカレートする起きろの催促にやむなくベッドから抜け出す。女はそそくさと身支度をし、子ども達の出迎え歓迎の中でその日の生活が始まる。男は野蛮にも衣服を着けずに趣味でもあるトイレでの読書、シャワー、身支度と半時間ほどの準備を経て、子ども達の歓迎を受ける。

ジーンズにコットンのシャツ、時には半袖姿で一日を過ごしている。散歩や外出時には、その上にコートを羽織るという感じである。子ども達は自前の毛皮スタイル、散歩の時もその毛皮だけである。

昨年の冬は、仮住まい。50年は経っている由緒正しい平屋の日本家屋がラッキーにも借りることができた。しかも、建築中の我家が見える距離。

そこで柴の子ども達と過ごした9ケ月余りは、日本の生活の原点を味わえた貴重な時間でもあった。50年経過していると言っても、きちっと手を入れられた趣豊かな家であり、桧の床は京都の寺社のように黒光りしている美しい佇まいである。しかも断熱改修までされていた。

柴の子ども達が、その貴重な文化遺産?を破壊しないように、せっかくの古色ある美しい床そして壁をカーペットやプラスチックの段ボールで覆い、子ども達もこれまで経験してこなかったケージ生活を強いられた。
エアコンは5台設置されていた。我々は、台所と二間続きの和室をつなげて生活をしたが、そこにエアコンは2台あった。引戸やふすま戸をはずしてオープン空間にしたせいか、エアコンだけでは寒く、オイルヒーターと電気ファンヒーターを追加しフル稼働でひと冬をやっと乗り切ったという感である。

実際の生活は、それでも寒く、毎日、鍋に熱燗、飲むそばから醒める、当然酒量はアップ。寝る前、湯船につかってその勢いで寝るという毎日であった。室温は、暖房を最大に効かせたピーク時でも、ようやく15℃、目覚めの朝は3、4℃と子ども時代を懐かしく思い出す日々であった。
しかも、冬山に行くときの防寒下着の上下を着込み、さらにシャツやセーターなどを重ねるというダルマスタイル。子ども達との散歩時には、その上に厚手のジャンバーにマフラーそして防寒帽、40年以上も前の冬、母親に無理矢理させられたスタイルと重ね合わさる。

仮住まいの前は、マンション住まい。駅前、鍵ひとつの利便性から抜けられず、長い時間を経てようやくPAC住宅の暮らしである。
マンションも数軒渡り住んだ、いわばマンション生活のベテランでもある。最後は女の母親と3人の同居ということもあって、150㎡あまりのマンション。これは設備のおばけであった。ついに一度も使うことのなかったサウナ。エアコンは玄関を含む全ての空間に行き渡るという親切さ。そのおかげで、相当に控えめに使ったつもりでも、夏冬の電気ガス代は月5、6万円と目の飛び出る始末であった。ちなみに仮住まいも同じような光熱費とこれまた・・。

窓を開けて暮らしたくても13階と高層ゆえの強風。365日閉じきりの生活を強いられる。熱交換型の室内換気扇も仕方なくつけっぱなし、柴の子ども達がところ狭しと走り回り、換気扇のお世話なくしては、そのかぐわしい臭いがこもってしまう。
外国製の食洗機、組込み式の洗濯機や乾燥機と電気代のかかるものばかり。当時、食洗機はまったく使わなかったにもかかわらず、夏冬以外でも電気ガス代は3万円前後と反省エネ生活。それでも、快適な空間であればまだしも、陽だまりとなる母親の寝室は冬でもぽかぽか、むしろ暑いくらい。北側の我々の寝室は、これがマンションと疑うくらいに冷え冷えしていた。夏も涼しいことはなく、在宅時はクーラーのお世話にならざるを得なかった。

そして尾山台の家。昔を思い出せば天国に近い。

35坪の2階建てとごぢんまりしている。これに5坪ほどの地下室と2坪のロフトがついている。高台の末端にあるという立地から逆転プランとし、お隣の庭や神社の木々などを楽しんでいる。2階はキッチンとリビングを中心としたワンルームでトイレ以外の仕切はなし。それにロフトも空間として連なっている。階段の小さな吹抜けで1階の玄関スペースとのつながりもある。1階は寝室納戸空間と浴室洗面トイレ空間それと玄関スペースと3つの空間で構成される。階段スペースから地下室へと降りる、そんなシンプルな構成である。
夏の暮らしも体験しているが、その話はいずれということにし、今味わっている冬の話をしてみたい。

ひとこと、地下からロフトまで同じ体感である。どこにいても寒くない、ふわっと暖かい。それでいてそれぞれに設置されている温度計をみると、まさしく20℃前後とけっして高くはない。その心地よさにくるまれながら、暖かさの質について改めて考えてみた。(つづく)

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