新築事例

古材を取り入れた現代の家づくり

こだわりの我が家

中野の家(東京都)

PACの健康でパッシブな家づくりに共感頂いたMさん夫妻が家づくりを思い描きはじめた時からずっとこだわられていたことは、古民家を思わせる日本家屋のイメージでした。これは、奥様の育った築100年の日本家屋の記憶と家への想いから心落ち着く場所を求めた結果でした。近頃の古民家ブームのような表面的な古さを再現するのではなく、育った家の面影を追いながら、現在の暮らしを探っていくことでもありました。

育った家の記憶、皮膚感覚的な、潜在意識に向き合うことで最近のステレオタイプな情報に振り回されることなく、何か幻想のようなものが膨らむこともなく、本当に望んでいるものを形にしていくことが出来たのではないかと思います。

その中でご夫妻自らの足で見つけられた古材欄間、照明器具が彩りを添えています。古い欄間は、新しく作るには多大な手間がかかる丁寧な仕事がされていて、時の経過による深い味わいがありました。小ぶりなガラスの古照明器具も、ソケットやコードを取り替えて利用。影をつくる温かい灯りになりました。

架構は全て手刻みによるもので、手斧で風合いを施した編曲を活かした曲がり梁は、地松の丸太梁を使った手間のかかる仕事になりました。また、淡路の左官職人による漆喰で柔らかな白色の壁の美しさが印象に残る仕上げになりました。建具職人が腕を振るった縦格子戸から入る柔らかな光は時間によって違った表情を与えてくれています。Mさんご家族だからこそ出来た、こだわりの家です。

設計・文:阿部 葉子

こだわりの我が家

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1. 自然の光をやわらかく受け止める漆喰の白い壁、古色塗装が施された木部は古民家を思わせながらも現代の暮らしに添った洗練された空間をつくり出している。

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2. 大きな開口と吹抜けから光が届く1階くつろぎの間。

3. 畳の間とくつろぎの間のつながりは建具の開閉でオープンにしたり、区切ったりと、状況に応じて使い分けできる。

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4. 2つ並んだ縦格子の引戸は右が玄関ホール、左がフリースペースへとつながっている。

5. くつろぎの間と畳の間の床は段差なくフラットにつながる。力強い杉7寸の大黒柱。右側の建具はトイレに続く引戸、これも建具屋さんによる手づくり。

6. 吹抜け自体は約3畳だが、階段まわりと一体となっており、吹抜けそのものの空間以上にとらえることができる。オープンなつくりの2階洗面。

Detail.1【欄間】

こだわりの我が家 こだわりの我が家

Mさんが骨董市で購入された欄間を2箇所に取り入れました。一つは和室の欄間に。もうひとつは組子欄間に金具を付け、古色塗装し直しました。和紙調のアクリルと組み合わせ玄関用としました。欄間の組子は菱組というもので、繊細な仕事がされているものです。

Detail.2【照明】

こだわりの我が家 こだわりの我が家 こだわりの我が家

いつの間にか、ほとんどの家の夜は、隅々まで明るい家になっています。帰宅してほっとするような灯りではなくなっているような気がしてならなかったのですが、このガラスの照明は、ろうそくの火を灯すような、影をつくりながら、なにかほっとするやさしい灯です。

Detail.3【建具】

こだわりの我が家

当初、古材の縦格子戸を随分探しまわりました。古材の建具は高さが1730~1770mm程度がほとんどで、現代の生活では頭を下げてくぐるような形になり不便を感じてしまうことになります。また、玄関とくつろぎの間の建具7本すべてを古材の統一したデザインでそろえるのも難しいことでした。今回は引き手の部分を掘り込みにした現代縦格子を建具職人さんにつくってもらい、奥様のお気に入りの建具になりました。

Detail.4【匠の塗料】

こだわりの我が家

この塗料は太田油脂(株)が開発・製造したもの。太田油脂はもともと食品油メーカーで、食用油と同じように口に入れても舐めても安全な塗料として「匠の塗料」を開発。エゴマ(シソ科の一年生植物)の種をしぼっただけの天然100%を独自の製法により塗料にしたもの。これに天然顔料(岐阜産の黒土から採取した伝統的な無機顔料)の久米蔵をブレンドしたものが「匠の塗油・久米蔵」。
塗り方は、布を浸み込ませ木地にすり込むように伸ばして仕上げます。オイルフィニッシュの塗料は、気の呼吸を妨げず、時間の経過とともに古色の深みを増していきます。

Detail.5【縦方向の風通しにも配慮された中野の家】

こだわりの我が家

1,2階をつなげる吹抜けを設けることで縦方向の風通しをはかることができました。これにより家全体の風通しが格段とよくなります。また、2階は個室の間取りですが、吹抜けに面して障子窓を設けて風の道をつくりました。個室であっても風通しを確保しています。