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無垢板の温もりが伝えてくれるもの

ヒノキ、サワラ、スギなど国産材にこだわった内装用無垢板を製造・販売する岡部材木店。原木の確かな選定、しっかりとした乾燥精度の良い加工による製品には定評があり、主に首都圏のPAC住宅ではかかせない存在です。岡部 隆幸さん、奥様の知子さんにお話を伺いました。

材料屋さんが丸太を届けにいらした。原木市場の方がここに赴き、値段を付けるため、丸太を原木市場まで運ぶエネルギーが省ける。価格は市場で買うのと同じ仕組みになっている。

岡部さんがいつも買っている材料屋さん、関橋材木店の関橋さん。

樹皮がむかれた丸太。樹種によって切り口の様子が異なる。手前の赤身と白太の違いがはっきりしているのが桧、奥がサワラ。

 

材木店にとって端材の処理も重要な仕事のひとつ。むだなく使うために、板材を作る過程で出た端材はこまかくして製紙用のチップに、樹皮はペレットストーブの原料に、さらに細かいものは粉砕して敷き藁に混ぜて使えるよう畜産業者に無償提供している。栗など広葉樹の端材は地元の養護学校の木工制作の材料に使われることも。

 




岡部材木店から車で15分程の所で、ヘリコプターで原木が山から谷に運ばれる様子を見ることができた。 谷には木を見る人、ヘリコプターと交信する人が付いている。一本の木が山から谷へ運ばれてくるのに、1分かかるか、かからないか。山側と谷側の巧みな連携。わずかな時間で、木が次々と運ばれていた。

 

無垢板製造の“先駆者”

古く江戸の頃から「西川材」の名で知られる関東の代表的な木材産地、飯能。この地にある岡部材木店は、15年程前にそれまでの柱材の製材業から、内装用の板材の製造、販売に事業を転換した経緯があります。 安い外材が大量に流入して国産材の価格が下がって、柱材の製材だけではやっていけない。それで家族会議を開いて“さてどうするか”ってね。ちょうどその頃弟の家をつくるのに、自分の所にある材木を加工屋さんの所で仕上げてもらったら、それがきれいで。と隆幸さん。それまでの仕事で目にしていた木は、仕上げる前の段階のもの。カンナ掛けされ仕上った板の美しさに触れたその出来事も内装板材の仕事へ至るひとつのきっかけであったという。
その当時、内装の板材は大手メーカーが製造する合板のものがまだまだ主流の時代であり、国産材にこだわったムクの板材をつくることは、それこそ先駆的なことだった。 仕事は始めの頃はなかなか注文がなく「新しく入れた機械で、板はどんどん出来ちゃう。仕方なくそれで鍋敷きを作ったり(笑)。」奥様の知子さんは自分たちの板材のPRのために設計事務所や設計士の集まりなどに積極的に顔を出すなど奔走したという。「木材を提供する側が、山の情報を使う側へ発信していないことがわかった。まわりを見ても同業者がいなかった。」
  その後、時代が岡部さんに追いついたように、住宅の健康や自然素材への関心が高まり、その認知、普及が急速に広まって行った。輸入材との競合の中、国産材利用に新たな付加価値を見出した岡部さんの仕事。「だれのために作るのかそこが大事。自分たちの利益のためだけでなく、使う人にとってより自然で、健康にも良い素材を提供したいとの思いで仕事をしてきた。」新たな時代の到来を予感し、その信念を実行し続けてこられたお二人の情熱に美しさを感じた。「安さだけを追求しても、後に何も残らないと思う“安かった”ってだけでね。使い手、住まい手に感謝してもらえる仕事をしていきたい。」

無垢板の温もり

つくり手、住まい手が人体や環境に対する安全性を住まいに求めることが意識されはじめた中、岡部さんは「自然素材・健康素材は有機的、人間的なもので、人の手がたくさん入って出来上がるもの。」と語る。山の木が住まいの仕上げ材として使えるようになるまでには、材の乾燥に始まり、様々な工程において多くの人の手がかけられる。無垢板の床に触れた時の温もりは人の手のあたたかさが伝わっているのかも、と思えてきた。

【追加】
PAC住宅の良質な内装用無垢板の背景(2008年2月)




無垢の板材ができるまで

1. 樹皮をむく
機械の上を移動しながら樹皮がむかれてゆく。岡部材木で扱う樹種は8割がサワラ、残り2割がヒノキ、スギなど。

2. 製材
樹皮をむいた丸太を板状にする。乾燥による収縮、仕上げなどで失われる分を見越し、ひと回り大きめにカットする。

3.天然乾燥
板と板の間に桟木を入れ、四方も風通しの良いように積み上げる。自然の状態の中で徐々に乾燥させていくことで、あばれや狂いが少なくなる。天然乾燥させる期間は薄い板で半年、厚い板だと1年くらい。天然乾燥で含水率を15%程度まで下げる。


乾燥しやすいようスペースを十分にとり、風の通りを考え材木が置かれる。
奥の黒い材木ほど、乾燥が十分になされている。

4.人工乾燥
天然乾燥後さらに含水率を10%以下にするため人工乾燥機に入れる。内部は65℃くらい。乾燥には2,3日かかる。乾燥具合は含水率計で計るが、乾燥室から出る蒸気・煙の様子でわかるという。

5.節の補修
板材になった時に、抜け落ちる可能性がある「死に節」は前もって抜き、埋め木を行い、補修する。必要な箇所をチェックして1ヶ所ずつ手作業で行う根気と手間のかかる作業。


埋め木必要な箇所を1ヶ所ずつチェック。埋め木は補修箇所
の大きさに合わせて用意。高齢級のヒノキの枝を使っている。
高価な無節の材料よりずっと手間がかかる節あり材の製造。
熟練された腕で手際よく作業が進められて行く。

6. 修正挽き
乾燥、節の補修を終えた板は修正挽きされる。乾燥によって、板には反りやねじれが出ているため、ここで最終仕上げの大きさに合わせ、挽く。

7. 実(さね)加工・超仕上げ
板の裏面に反り防止のしゃくりをいれ、側面にはオス・メスの「実加工」を行った後、最後に超仕上げ(カンナがけ)を行う。


実加工されることによって、板がピタリと合う。
超仕上げで出たカンナくず。裏が少し透けるくらいの厚さでかんなが
けされている。

9. ラッピング
最後にラッピングをして出荷。本当はビニールを使いたくないのだが、紙など湿気を含んでしまう物だと、せっかく乾燥した板が台無しになってしまう。ラッピングを最小限にするため、搬入場所や搬入後すぐに使うかなどを事前に確認し、必要がない場合はラッピングしない。

岡部材木店

岡部 隆幸さんは作業しているみんなにも今どんな注文の仕事をしているかを知らせているという。「使ってもらう相手を知ると、仕事をする時の気持ちの入り方が変わるよね。」