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左官の仕事はおもしろい!

百年以上続く寿々木塗装店4代目として長年塗装の仕事に携わる鈴木光明さん。自ら開発されている塗料は人体や環境への配慮がされており、PAC住宅でも床や建具などの塗料に使わせていただいています。その鈴木さん、「塗料を使うのは最小限に」とおっしゃいます。言葉の真意をお聞きしたく、事務所を訪ねました。

木材の汚れを落とす

木材の汚れの落とし方を実践を交えて教えて頂いた。外に置かれていた建具を使用。これは鈴木さんが“教材用”として取っておいたもの。。

スポンジに水を含ませ、洗剤を適度につけ、ゴシゴシと汚れを落とす。スポンジ、洗剤は食器洗い用のものでOK。洗剤は手を洗う石鹸でも大丈夫。 含ませる水は適度に。

その後水洗い。
黒い部分の変化から
左部分の汚れが
よく落ちたのがわかる。

乾かす。この時はヘアードライヤーを使った。
乾くと材は白っぽくなった。

木が毛羽立つようになるが、280番の紙やすりでこすると表面がきれいになった。(写真4)汚れは落ちたが、良く見ると木にまだ黒い斑点が付いていた。尋ねると「これはカビ。腐っている、へこんでる訳ではないでしょ。」と鈴木さん。
やすりをかけた後、触ってみると 表面はツルツルだった

 

キーワードは“地球環境”

開口一番「塗料は人間のためでしかないの。地球上の他の生物には色も塗膜も一切関係ない。人間が自分の財産を守るために塗料を塗っているんでしょ。」と鈴木さん。「今我々が生きるために地球環境を壊してしまったら、次の世代は地球に住めなくなる。だから今、我々人間はこれ以上地球環境を破壊してはいけない。そのためには“最小限のものを使う”という考え方をしなくては。」
一般的に使われる塗料には施工性、耐久性等を優先するがために人体や環境に負担をかける物質が含まれていたり、また製造過程では大量にCO2が排出されるという。「自分の家のために塗料をふんだんに使って、自分たちの身体や環境を壊したら何にもならない。それを考えれば、“何でも塗る”という考え方に立つことはないわけ。」

塗料を売りたがらない塗装屋さん

環境や人体のためには塗料を塗らないのが一番良いと言うなら、鈴木さんはなぜ塗料の開発をしているのか不思議に思うところ。その答えは“塗料は全く必要ない訳ではない”と考えていらっしゃるから。「メンテナンスの面や、子どもの感性を育てたり、精神を休める環境をつくるために塗料が必要な時もある」と。塗料が必要な時に、できるだけ環境に負担をかけず安全なものをと天然素材を原料とした塗料を開発されている。「しかしあくまでもまず、塗らないで物を守るということを考えて、どうしても塗らなきゃ守れないものだけ塗ればいい。」塗装屋さんでありながら塗ることを安易に勧めない鈴木さん。地球環境を守るという信念と使い手の事を第一に考えておられる姿勢が窺える。

塗らずに“取り替える”発想

しかし、塗料を塗らないと黒ずみや汚れが付き易そうなのが気になりませんかと質問を投げかけると「建物の外部、内部問わず、汚れや黒ずみは種類によって落とすことができるものもあるし、材を取り替えたっていい。」とあっさり。「汚れが気になるから塗るって言うけど、塗ってはげた時の方がよっぽど汚いよ。後で塗り直してもきれいにならないよ。半永久的に(物を)持たせようとしたら、塗料は3年おきにぬらなくちゃいけない。それにかかる手間と塗料代と、塗料を作る時の地球汚染を考えたら、始めから塗らないで、腐ったらまた取り替えた方がよっぽど地球環境にいいじゃない?」(なるほどダイナミックな発想…)加えて「塗る手間を考えたら洗ってあげたらいい、塩水で。海水くらいの塩水で洗ってあげれば、腐朽菌の繁殖予防になる。」とも。徹底して“塗らないこと”を前提とした回答。話を伺っていくにつれて、ふと、日常目にする物は素地の木の良さが生かされず塗装されたものが多いことに気付いた。「日本は台風ひとつくれば湿度が90%くらいになっちゃう。そんな所で木材に塗って守れる塗料って言ったらウレタン(塗装)しかない。だから既製品の家具や建具はみんなウレタンが塗られている。材が狂ってクレームが来ないようにね。」
しかし塗料を塗らなくても良い箇所、材料があると鈴木さんはおっしゃいます。「木の赤身、年輪のところはヤニがいっぱい詰っているから、腐らない。そして20年位使って必要に応じて取り替えてもいい。PACさんの建物は骨組みをしっかりつくっているじゃない。柱以外の部分はどうにでもなる。」

家は住まい手がつくるもの

塗料を塗らないことを前提にすると、素材の選定に熟慮する、取り替えやすいおさめ方を工夫するなど、つくり手の知識や技術の高さが求められてくるだろう。鈴木さんにつくり手に向けてメッセージをお願いすると、つくり手の知識、力量はもちろんのこと住まい手にも家づくりを通じて木材についてもっと知って欲しい、住まい手が家を守っていって欲しいとおっしゃいました。ご自身のHPで、エコロジーの本来の意味は“住まう学問”という事と書かれていらっしゃいます。自分たちで家のメンテナンスを行えば、使う材料が身体や環境にどう影響してくるかを学び感じることができるからだろう。
「『あなた方のコンセプトに従ってこれまで家を建ててきました。これからはあなたが守って、つくって下さい。』と施主に言わなくちゃ。」鈴木さんのつくる塗料は一般の方でも簡単に取り扱うことができるものになっている。


○塗料製造そのものが環境に負担

塗料は塗装する時の有機溶剤によるものだけではなく、劣化や樹脂の変化によるものや製造段階においても環境に負担をかける。「塗料をつくるには油と樹脂を 300℃の温度で約20時間かけて反応させなきゃいけない。300℃の温度は軽油や重油を炊いた蒸気でつくる。バンバンCO2を出して地球を汚染しながら塗料の原料をつくる。それなら塗料をたくさん使う事ないじゃない。最小限に食い止める事の方が必要でしょ。」と鈴木さん。

○鈴木さんが開発している塗料

亜麻仁油や大豆油、サフラワー油などの天然植物油と天然樹脂を原料にしたものや、蜂の巣から採れる蜜蝋を原料としたワックスなど、石油化学製品とは一線を画した天然素材で作られている。しかし鈴木さんは「うちのは自然塗料じゃありませんよ。」と言う。製造過程でCO2を排出することは他の塗料と変わらない、大豆やサフラワーなどには農薬が含まれてしまっている。このような事から出た言葉だろう。原料にまで徹底したものを使うのはコストの面で住宅向けにするのは難しいそうだ。しかし鈴木さんの扱う天然素材塗料はすべて成分安全データシートによって人体や環境に害のないことが証明された原料を使用し、塗料自体についても成分証明書を提示されている。人体の安全やコスト、施工性、日本の気候風土に合うことなどトータルに配慮してつくられた塗料である。
しかし天然塗料すべてが人体に安全とは限らない。使用する前に自分たちの身体に合った塗料か確かめて使用することが大切と鈴木さんもおっしゃいます。

トランスファー

塗装業務だけでなく、塗装コンサルタント業務部門アトリエベルを設立。取材中もユーザーやメーカーから相談の電話が絶えなかった。