HOME >> 関連図書 >> プラス思考の健康住宅づくり

プラス思考の健康住宅づくり

関連図書トップページへ

見えない所に空気が回るエアサイクルの家

「プラス思考の健康住宅づくり」1994年発行

 建物の中の冷たい所を建築的手法でなくすのには、どうしたらいいのかを考えていきましょう。見えない所が健康の決め手のテーマ、そして、夏、二つの風通しのテーマでも、お話ししましたが、健康の観点から見ると、在来軸組工法の最大の長所になりうる点は、見えない所、すなわち、床下空間と一・二階のふところ空間そして小屋空間が内壁空洞を介して、ひとつながりに連通することが可能で、そこが空気の流れる道になることです。

 この、ひとつながりの連通する空間を、今後は、躯体内空間と呼びましょう。この躯体内空間を完全につくったのがPAC住宅です。PAC住宅では、夏、床下換気口と棟及び小屋換気口を開放し、その躯体内空間に、夜間冷気など一連の垂直換気を生じさせて、夏の健康な住まいづくりに役立てていることは、すでにお話ししたとおりです。

 今回は、冬がテーマですから、前述した上下の換気口を閉じて、冬モードにします。これで、外気とは遮断されましたが、躯体内空間には、夏とは違う空気の流れが発生します。居間など比較的温度の高い部屋の内壁空洞の空気は、室内側から暖められて上昇します。
 一方、比較的温度の低い押入などの内壁空洞の空気は、冷えていますから下降します。このふたつの空気の流れが駆動力となって、床下空間などの躯体内空間に空気循環、エアサイクルが生じます。いわゆるエアサイクル住宅が、この段階でできたと言えます。

 エアサイクル住宅は建物全体が、柱や梁などの構造体の外側で断熱されており、冬は上下の換気口が閉じられることで、気密性の高い建物になりますが、その内側の躯体内空間で、空気が流れているのです。

 話は少し横道に入りますが、次の言葉を知っていますか。「流れる空気にふれさせろ。」昔から、木を扱う人が言っていたことですが、木を腐らせないためには、空気のよどんだ所に置くなという意味です。

 洗濯物で考えてもわかりますね。無風状態よりは、ほんの少しでも風があれば、ずいぶんと乾燥状態が違います。そして幸いなことに、土台や柱、梁などの建物を構成する重要な木材は、ほとんどこの空気の常に流れている躯体内空間にあるのです。
 乾燥ということを、もう少し考えていきましょう。では、この流れる空気の温度が高かったら、乾燥状態はどうなるでしょうか。
 当然によくなります。洗濯物でも、夜干すよりは、昼間干したほうがよりよく乾くのと同じことなのです。同様に、この躯体内空間に流れる空気が暖くなったら、一層乾燥状態がよくなり、建物の耐久性を向上させるとともに、住まいを様々な湿気の害から守ることになります。
 そして同時に、前のテーマでふれた建物の中の冷たい所を取り除く役割も果たし、住む人の健康にも貢献することにお気づきですね。
 エアサイクル住宅は、建物構造体の外側で断熱されていて、部屋の周囲には断熱されていないので、室内に発生する熱が、天井や内壁から伝わってこの躯体内空間の空気を暖めます。

 室内は、どのような熱源で熱が発生するのでしょうか。大きく分けて二つあります。生活熱と太陽熱です。この生活熱が以外と大きいのです。照明器具、冷蔵庫、テレビ、調理、風呂、暖房そして、人体からも発生しています。この熱を活用しない手はありません。
 普通の住宅は、部屋の周囲に断熱されているのですから、残念ながら、生活熱を発生した部屋以外でリサイクルさせることはできないのです。
 この意味で、エアサイクル住宅はリサイクル住宅とも言えるのでしょう。雪国など日照条件の悪い所でも、効果の高い理由がここにあります。
 さて、太陽熱をみていきましょう。窓から入る太陽光が部屋の中を暖めます。その熱がその部屋ばかりでなく、天井や内壁から躯体内空間へ伝わり、その躯体内空間に流れる空気にのって、建物の隅々まで伝わっていきます。
 この躯体内空間を構成できるのが、在来軸組工法です。昔の土壁の家からは大きく変化してしまいましたが、日本で育ってきた良さが違った意味で残ったと言えるのかもしれません。

 しかし残念なことに、現在では、在来軸組工法でもこの躯体内空間は生かされていないことは、すでに何回か述べました。
 躯体内空間は、これまでみてきましたように、暖かさ、涼しさ、温度差の解消、湿気の調整、木材の乾燥など、健康な住宅のほとんどの要素に重要な役割を果たしているのです。
 見えない所の重要さが集約されている場所なのです。木造住宅の良さが、さかんに喧伝されていますが、この隠れてしまって見えない重要部分を、再認識して欲しいものです。