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プラス思考の健康住宅づくり

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小さくつくっても広い家

「プラス思考の健康住宅づくり」1994年発行

 欧米人にとっては、うさぎ小屋に象徴されるように、日本人の家は小さくて狭っ苦しいという見方が一般的になっているようです。また、それに呼応するかのように、多くの日本人にとって、広い家に暮らしたいと言う願望は、いまだに共通のものなのでしょう。
 しかし、最近の注文住宅は、平均四十坪程度になっていますから、一概に狭いとは言いきれません。
 敗戦後の、本当に小さく、食寝分離されていない、ましてや個室など考えようもなかった住宅から、食事をする場所と寝る場所を分離させる機能別間取りへ、そして現在の何LDKの間取りへと発展してきたわけです。しかも、一家族四人程度で四十坪もあるわけですから、普通に考えれば狭いという不満は解消されていてもいいはずなのです。
 それなのに、多くの日本人にとって相変わらず日本の住宅は狭いという感じ方が共通しているのは、単なる戦後からの思い込みが抜けないのか、豊かになってもより豊かになりたいという日本人特有の強迫観念なのか、不思議な思いがします。
 建築面積は飛躍的に増えたわけですから、狭く感じたり、広く感じたりすることは単に建築面積だけに関係している訳ではないのです。建築面積は大きくても、生活をすると狭く感じる家が多い、すなわち、最近の家は、外から見れば大きな家なのですが、いったん中に入るとうさぎ小屋という印象を持ってしまうということなのでしょう。
 いったいなぜそうなってしまったのか、それは第一部でふれられたように、現代の間取り「何LDK」そのものに根本原因が潜んでいます。
 何LDKへのとらわれから逃れられない限り、広々と生活できる家を手に入れることは困難なことです。では、そのとらわれから逃れて新しい間取りを考えてみましょう。
 何LDKの間取りは、大きくつくっても狭い家でした。新しい間取りはその正反対、小さくつくっても広い家なのです。「広がり空間」と呼ぶことにしましょう。
 再確認しておきますが、建築面積を大きくするということではありません。たとえ建築面積が小さくしかとれなくても、広々とした生活ができる間取りが可能であるということなのです。
 狭く感じる、広く感じるとはどういうことなのかを考えてください。それは部屋の大きさに左右されています。決して家全体の大きさではないのです。
八十坪の家でも六畳の部屋にいれば六畳の広さしか感じないのです。逆に三十坪の家でも二十五畳の部屋にいれば二十五畳の広さを感じます。どちらが広々とした生活感を得られるかは自明のことです。ここに、「広がり空間」の間取りのヒントがあります。
 何LDKの間取りは個室をパズルの様に組み合わせていく方法ですから、二十五畳もの部屋をとろうとしたら建築面積が大変に大きくなってしまうか、他の部屋にしわ寄せがきてしまい、かえって、生活がしにくくなってしまうでしょう。
 したがって、「広がり空間」の間取りは、何LDKの間取りの延長線上にあるわけではありません。新しい間取りと前述した理由はここにあります。
 しかし、もう一歩踏み込んで考えて見ると、むしろ何LDKの方がここ数十年の新しい間取りであり、それが日本人の生活の実情に合わなくなってきた外来思想だということはすでに述べられた通りのことです。
 逆に、「広がり空間」は日本人の生活の実情にしっくりとなじみ、日本人の生活や心の伝統を引き継いでいる間取りと言うことができます。
 では、「広がり空間」の基本的考え方を見てみましょう。まず、個室は必要以外につくらない、が原則です。一般的にいえば、夫婦の寝室以外は個室としてはつくらないということになります。
 個室としてはつくらない、それは個室は必要ないということではありません。個室として必要な時は、仕切られて個室となる、それ以外は開け放たれて広々とした空間となる間取りです。
 日本人の生活をよく見てみれば、個室が常に必要な暮らし方をしてはいないのです。家族が見える所にいるほうが安心していますし、内容はわからなくても、何となく家族の声が聞こえているほうが気が安らいでいるのです。
 さりげないふれあいが自然に生じる空間に家族みんなでいて、何げなく会話がかわされお互いの状況が理解される、そんな生活スタイルが日本人の生活習慣に適合しているようですし、精神衛生にもいいのではないでしょうか。
 そのような生活スタイルを実現するためには、個室中心の間取りではなく、家族が一緒にいても気にならない広さが確保される間取りが新しく復活される必要があります。