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プラス思考の健康住宅づくり

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使えない・使わない

「プラス思考の健康住宅づくり」1994年発行

 住まいの中で使えない、使わないといったらなにを連想されるだろう。限られた坪数、限られた予算の中で、家族みんなの要望をできるだけ公平に組んで建てたマイホーム。しかも考えに考え抜いたプラン。展示場もずいぶんと回って、ショールームへも足を運んで、自分の目で設備も選んだ。収納の勉強やコーディネートのセミナーにも参加した。
 こうした事前の勉強が、意外と落し穴になることも。何故なら、だんだん自分の家族の生活からかけはなれた家づくりになってきてしまう可能性があるからだ。
 展示場はよほど冷静な目で見ないと判断を誤ってしまう。例えばファッションショーへ行って気にいったドレスを見つけたとする。しかし同じドレスを着てもあのモデルのような雰囲気にはならないだろうとの想像がつく。ファッションショーは見るもの、ショーを楽しむものと割り切っているからだと思う。
 展示場もファッションショーのモデルと一緒で、展示場のものをそっくりそのまま、あるいはその一部を自分の家へ持ち込んでも、自分達の生活スタイルに合うかどうかは疑問である。
 展示場やショールームには最新の設備、豪華な家具、そして小物の一つ一つにもかなり贅沢な物が使われている。一つ一つの部屋もすっかりコーディネートされていて、そこにある家具から小物まで、そっくり部屋ごと欲しい気分になってしまう。
 お父さんのあこがれの書斎。重厚感あふれる木製の書棚にデスク、皮張りの椅子、窓の傍にはサイドボードがあってブランデーなんかが入っている。やっぱり書斎は欲しいなということになってしまう。
 家の中は結構散らかっているもの。お母さんはいつでもお客さまの通せる個室の応接室をご要望。もちろん展示場には洒落た応接間がある。高価な段通か何かのカーペットに、ゆったり座れるソファーセット、天井にはシャンデリアがかかっている。
 子供部屋も夢いっぱいの空間。子供の喜ぶファミコンや天体望遠鏡があり、カラフルなカーテンがついていたりする。
 本当に必要な物から、できたら欲しいという物にだんだんこころを奪われていって、意外と実際の生活では使いきれない物までが家の中にとりこまれてしまう。
 それでなくても家の中には信じられない程、使わない物が収納を占めているものである。買ってきたことすら忘れている物もある。お中元やお歳暮のもらいものでとってある物、一度か二度しか使わずにそのまましまいこんである通信販売などで求めた物。手の届かないような高いところに収納されているものはほとんど使ってないものだ。
 家をつくる時、収納をかなり気にするが、こういう使ってないものを捨てることのほうが先ではないだろうか。
 しかも家をつくる時の予算は日常の買い物と違って大きいので、少し感覚が狂うものである。普段なら絶対買わないような物も総予算から見ると一つ一つの家具や設備はたいした金額にならないので、つい手を出してしまう。簡単に捨てられる物なら良いけれど、高価な物だったり、大きいもの、作り付けの物だったりしたら悲惨である。
 また、住まいの中には使ってない生活空間の方がはるかに多いものである。昼間一人で居る時などは、自分の居る部屋以外は誰も使ってないことになる。
 使ってないから無駄な空間かというともちろんそうではないけれど、やっぱり無駄な空間が結構ありそうだ。
 無駄な空間を考えてみる。無駄な空間とは、日常ほとんど誰もいない、使われない空間、そして使えない空間は無駄ということになりそうだ。
 家に一人しか居なくても、部屋が一部屋だったら、その家は使いきっていることになる。
 これは極端な例だけれど無駄な空間を考えるヒントにはなるのではないだろうか。
 一人しか居ない家に一部屋という発想は、結局空間を区切らないと言うことでもある。
 であれば、リビングもダイニングも茶の間も同じ空間に、普段使わない書斎や応接間も同じ空間にとっておけば良い事になりはしないか。
 そうすれば同じ空間でお父さんは書斎コーナーで本を読んでいる。お母さんは食事の片付け、子供達はリビング、おばあちゃんは茶の間に、というふうに家族のふれあいも豊かになるというもの。 
 ただ、だだっぴろい空間では家づくりなどとは言い難い空間になってしまう。
 しかし、日本には必要な時に個室にする、あるいはちよっと目隠しに半分仕切るといった具合に自在に空間を仕切れる引き戸という便利なものがある。