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プラス思考の健康住宅づくり

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10年で使えなくなる間取り

「プラス思考の健康住宅づくり」1994年発行

 家をつくる時は、さまざまな状況を想定するものである。近隣の友人が遊びに来た時のこと、ちよっと気取ったお客さまが見えた時、親戚が泊りに来た時と。そしてその一つ一つに、玄関で迎えた時からお茶の間や応接に通す状況まで、意外ときめ細かに考えるものである。
 そして長期的に見た、将来の家の姿も頭に描いている。子供達と暮らすようになるかも知れない、であれば二階にも小さなバスルームをつくっておいてはどうか、あるいは、増築を考えて、方位や玄関の位置、部屋の配置を考えるなど。自分が死んだ時、棺桶をどう玄関から出すかまで考えている例があったとのこと、驚いた。
 また最近では高齢化社会ということもあって、年をとった時いかに安全に住まえるかを検討される方は多い。段差をなくす、階段に踊り場を設ける、手すりをつける、浴槽の工夫をするとかいろいろある。
 車椅子での生活を考え、玄関のスロープや、廊下を広くする、あるいはホームエレベータの設置を検討したりする。寝たきりになったらどうするかまで考えいたりする。
 異論があるかも知れないが、車椅子での生活や寝たきりになった時の事までをも想定するのはいかがなものだろう。もちろん高齢者のための配慮は家づくりにおいてとても必要な事と思うし、そうした事態に備えて設計上の工夫をしておく必要はあるかも知れない。
 しかし、最初から寝たきりの事などをあまり真面目に考えていると本当にそうなってしまうことがあるものである。
 将来こうしたい、ああしたいという思いは潜在意識へと働きかけ、思いが強ければ強いほど実現するものである。
 同じことで、こうはなりたくない、でももし自分が寝たきりになったら、という思考はどうだろう。むしろ、年をとっても元気でいる自分を常に思い描いていることの方が健全のような気がするがいかがなものか。
 このようにさまざまな状況や、長期的な将来の家の姿を思い描いている人は少なくない。しかし問題は、意外と五年先、十年先のことを考えていないということである。
 家族の成長、変化の大きい新築からの十年という、中期的な住まい方については意外と考えられていない。
 十年間の子供の成長にはめまぐるしいものがある。身体の成長は言うに及ばず、小学生に上がる前、低学年に於ける家庭での生活、中学・高校・大学受験、場合によっては就職や結婚と。子供が二人三人といたらなおさらのことである。
 こうしたさまざまな成長過程において、家庭生活における過ごし方、子供室の役割は変わってくる。そして子供たちは、同居の場合を除けば家からはいなくなる存在であるということである。
 昔の住まいのようにどの部屋のつくりも大差なく、どういう使い方でもできる間取りなら問題ないが、子供の数だけ子供部屋をつくる、しかも転用のきかないようなかたちの子供部屋をつくってしまうと、本当にわずか十年あまりで建て替えなどということになってしまう。
 子供部屋のつくりの難しさは、子供の精神的な成長、こころの成長を配慮しなければならないことである。子供にとって家庭環境は人格形成の場に他ならず、家族との関わりの中で社会性を身につけていく場である。
 子供の自由な発想、柔軟な思想をそのままのばしてやれるかどうかは、家庭が子供にとって生活の中心になっている時代の、親とのコミュニケーションによって大きく左右されるものである。
 だからこそ、子供が三人いるから六畳の子供部屋を三部屋つくればいいという発想では子供部屋はつくれないということである。子供にとって必要な時期に個室を与える、しかも何の為に、何時間位が個室で過ごさせるのに適切かも考えて与える必要がある。その時必要なものだけを子供部屋に設置してやればよいことになる。
 もし六畳の子供部屋を二階に三部屋つくったとしたら、十年後はどうなっているだろう。子供が一人二人と家を出て行った後、恐らく使い回しのできない、納戸にでもするしかない空間になってしまうだろう。
 作り付けの書棚や収納があったらなおさらのことである。壁とドアで閉鎖的につくる個室、目的を限定した部屋のつくりは将来ほとんど転用が効かない。
 せっかく二階の陽当りのいい場所に、使っていない、誰もいない部屋がいくつかあっても、突然おばあちゃんやおじいちゃんが同居という時には対応できない。
 後から壁を取り払うことは難しい。構造上の問題がでてきてしまう。そうなれば、大がかりな改築、あるいは建て替えということが余儀なくされてしまうのである。