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プラス思考の健康住宅づくり

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大きくなったのに狭い家

「プラス思考の健康住宅づくり」1994年発行

 家を立て替えるきっかけの多くは、家が狭くなったからという理由にある。子供にそろそろ個室を与えたい、あるいは両親との同居といったことなどから部屋が足りなくなる為である。
 そして何より、もっと広々とした空間でゆったり暮らしたいと思っている。そして現実に立て替えた住まいは、前の住まいよりは大きな坪数になっているケースがほとんどである。
 ところで、私たちはよく四LDKとか五LDKといった表現を使う。昔は和八・六・六・三畳・洋七半・浴・台・洗・便などと表示していた。だから部屋数が多くても、広い家なのか狭い家なのかは想像できた。ところがこのLDKの表現は、何となく四LDKよりは五LDK、六LDKの方が大きい家という印象をもってしまう。
 実はこれが全くの錯覚である。このLDKの前につく数字は個室の数を表わし、それにリビング・ダイニング・キッチンという表示である。従って二LDKでもリビングひとつが十二畳、あと八畳に六畳、ダイニング・キッチンで七畳半という家と、四LDKでもリビングが八畳、あと六畳、四畳半、四畳半、三畳、ダイニング・キッチンで七畳半という家とではどちらが大きいかと言うと、実は大きさは全く一緒である。
 ところがどちらが広く感じるかといったら、二LDKの家の方ということになる。何故なら、二LDKの家には十二畳の大きさの部屋がある、四LDKの家でもっとも大きい部屋が八畳、言い変えれば家の中に八畳より広い空間がないということになる。
 ここにヒントがある。家の広さは、部屋の大きさだということである。いくら大きい家をつくっても、小さい部屋ばかりをたくさんつくったら、どこへ行っても狭いのである。 二つの部屋に同時には存在できないから、部屋の大きさがその家の広さということになってしまう。
 あたりまえのことのようだけれど、せっかく以前より大きい家をつくったのに狭く感じるというのはよくあること。どうしてそうなるのだろう。
 家をつくる時、何の部屋をいくつつくるということから考え始めはしないだろうか。例えば、子供が二人いるから子供部屋が二つ、夫婦の寝室、おばあちゃん、もしくはおじいちゃんの部屋。せっかく新築するのだからお客様の部屋も欲しい。
 だいぶ物も増えたから少し広めの納戸も欲しいしと。そしてみんなが個室を持つという発想を広げるなら、主婦のための家事室を、お父さんには書斎をときりがなくなってしまう。しょせんは決められた坪数の中での家づくり、結局部屋数が増え、一つ一つの部屋が小さくなってしまう。
 もちろん住まいに必要なダイニング・キッチン・浴室・トイレ・洗面所と考えていくと、欲しかった広々したリビングもなかなか思うにまかせない。
 昔の住まいは何の部屋という、明確な一つの目的をもった部屋はほとんどなかった。畳の部屋は茶の間でもあり、おばあちゃんやおじいちゃんの部屋であったりした。場合によっては夫婦の寝室ということもあった。
 ましてや一人一部屋の子供部屋なんて考えられなかった。せいぜい子供達の部屋ということで、一部屋与えられたら良い方だった。 
 誰の部屋とか、何の部屋、ということでなく、食事をした部屋が片付けば、そこはそのまま団欒の場、茶の間としての機能を持ち得た。
 部屋が限定されるようになったのは、ベッドでの生活が一般的になったこともある。子供部屋であればベッドがあっても勉強部屋や遊びの空間ともなり得るが、夫婦の寝室にベッドを入れてしまうと汎用性はなくなってしまう。布団を敷いて寝る生活であれば、昼間は別の用途で使える。
 もちろん、一つの部屋で寝食をともにするような生活には不便さも伴うし、貧しさの象徴と言われてもしかたがないが、その位住まいというものは自由に考えていってもいいような気がする。
 そうでもしないと、今の個室を重視した家づくりからは脱皮できないのではないだろうか。
 もう一つ、個室というとドアと壁というつくりが常識になってしまっている。そうでないと個室でないような感覚があるのかも知れない。
 昔の住まいは全く個室空間がなかったかというと、実はとんでもないことで、ちゃんとあった。ただ壁とドアという閉鎖的な空間でなかっただけである。
 通常は解放空間で、必要な時に襖や障子を閉じることで個室空間をつくっていた。
 日本の家は屋根の家、欧米の家は壁の家と言われるように、日本の家は土台を回して柱を立て梁でむすぶ軸組工法、そして欧米の家は石や煉瓦を積んでつくる組積造。軸組工法が平面的な広がりを持つのに対し、組積造は上へと伸びていく。
 せっかく構造的には、平面的な広がりのつくれる日本の家。なのに、間取りを何LDKで考えている限り、小さくても広い家はつくれそうもない。