HOME >> 関連図書 >> プラス思考の健康住宅づくり

プラス思考の健康住宅づくり

関連図書トップページへ

風通しを忘れてしまった現代の家

「プラス思考の健康住宅づくり」1994年発行

 工法の歴史の中で大きな大きな忘れ物をしてしまった日本の住まい。新しい技術が生まれる時、思いがけない重要な機能をおとしてしまうことはよくあること。その見落としてしまった機能を何とかさらに新しい技術でカバーしようとすると、複雑なモノになってしまって、本来持っていた価値まで失われてしまったりする。
 むしろそんな時は、見落としてしまった機能を、新しい技術の中にいかに取り戻してやるかと考えた方が素直ではないだろうか。その前にまず必要な事は、見落としてしまったものが何かに気付くことである。
 私たちが住まいづくりのなかで忘れてきたもの、風通し。そのことが、家にも、住まい手へも健康ということで大きな影響をもたらすことになる。
 昔の住まいの基礎から見ていきたい。石場立てとか束石工法といって、床下空間は風が通り抜けていた。床下にもぐれる程の空間があった。床下で猫が子供を産むなどということがあったし、その涼しさを知ってか、夏は犬の昼寝する姿が見られた。
 何故基礎が、風通しの良い束石工法から現在の、コンクリートで基礎をぐるりと囲む、布基礎工法に変わったかというと、地震や地盤沈下、火事に強くそして暖かく住まう為ということだった。
 日本の軸組工法は、木と木を現在のように釘を使って繋ぐのではなく、仕口と言って木材と木材を組み合わせて繋ぐ、とてもしっかりしたつくりだった。しかしながら、基礎が束石では、ぐらっときたら基礎が崩れてしまう。また、床下にもぐれるということは誰かがもぐって火をつけたらおしまいということである。また、床下にツーツーと風が抜けていては、冬は床面が冷たくてどうしょうもなかったに違いない。
 日本は湿気の多い国、そのために基礎を高くして風通しをよくしていたのだけれど、安全性そして寒さということが優先されてしまった訳である。
 軸組工法には床下ばかりでなく、外壁と室内の壁の間に柱の太さ分の空間、壁空洞が、そして部屋と部屋の間にも空間、間仕切り壁空洞がある。そしてこの内壁空洞、間仕切り壁空洞は床下空間と小屋裏空間にそれぞれつなげることができる。一階の天井と二階の床の間にも空間がある。言わば、部屋の床、壁、天井はぐるりと空間があって、空気の流れ、風通しが期待できた。
 布基礎工法に変わっても、この室内の回りに空気の流れる道があったということは大きな救いだった。わずかばかりとはいえ、床下換気口がついていて、小屋裏にも換気口がついていれば外気が部屋の回りを通り抜けさせる工夫ができた訳である。
 室内はもちろん風通しが良かったし、言わば家全体の風通しが良かった。ところが、これでは寒くてどうしようもなかった。室内で暖房をしてもみんな壁空洞を通じて外へと逃げてしまう。
 そこで室内を取り囲む空間に断熱をしようということになる。目的は明快で寒さへの対応、そして省エネルギーということだった。こうして風通しを失った住まいは、湿気ということで大きな悩みを抱えることになる。
 住まいの変遷は、基礎と断熱だけではなかった。実は壁も大きく変わった。昔の壁は土壁や板壁でできていた。現在は、モルタルもしくはサイディングの壁に変わってきている。
 これも寒さ、そして火事に強くするためだった。土や木は湿気が多いと吸い、乾燥してきて湿気が少ないと出すという、吸放湿性があった。そのため土壁と柱や梁の間に隙間が生じ、室内の湿気の調整ができた。屋根はどうだろう。昔は藁葺きや茅葺きの屋根、現在は瓦や金属屋根、スレート屋根などへと変わってきている。壁と同じく、自然の素材でなくなったため、湿気という目で見ると弱くなってしまった。
 そして大きく変わった窓。昔の木製建具からアルミサッシへと変わったことによって、室内の湿気の調整ができなくなってしまった。風が吹くとがたがた音を立てて、枠を押さえるとガラスが音を立てるというような、隙間だらけの昔の木製建具は室内の空気を外気と自然に入れ替えてくれていた。アルミサッシは気密性に優れている。隙間風なんて全く考えられない。しかし、室内の湿気の調整もしてくれない。襖や障子、畳などの素材が少なくなったことも室内の湿気の調整を不利にしてしまっている。
 日本の住まいは、一言でいうと、夏向きの住まいから、冬向きの住まいへと変わったことになる。
 風通しが悪くなったということは、湿気に弱くなったことに他ならない。
 日本の住まいにとって、もっとも重要だった風通し、それは湿気から住まいを守ることが何より優先されていたためである。
 湿気に弱いということは、木の家にとって、腐りの問題にもつながる。そして風通しを失ったということは、夏の暑さを助長させることになる。