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夫婦の生活実感でつくる家

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見えない所も、風通しと陽あたりが必要、衣替えのできる家1

「夫婦の生活実感でつくる家」1997年発行
 

  日本の健康住宅の、基本的な要素、風通しと陽あたり。
 この最低限の基本要素も、単純なものではなく、総合的かつ複合的に生かさなければいけないなものなのです。
 普通は、風通しや陽あたりと言えば、居住空間のみを考えてしまいます。しかし、本当に、健康な家を求めるのであれば、それは一面的すぎます。風通しと陽あたりという当たり前のことも、もう少し、トータルに考える必要があります。

 人間の健康を考えても、皮膚や髪や爪などの体の表面、内臓などの内部、骨格、脳や神経そして血管、眼や鼻そして耳などの感覚器官、さらに、それらの働きのバランスと、様々な要素が総合的に、複合的に、良好に機能してこそ、保たれるものなのです。
 住宅も同じではないでしょうか。

 風通しと陽あたりという、この基本的な、たった2つの要素だけをとらえてみても、室内のみで考えるだけでは不十分なのです。
 建物は、屋根や外壁そして窓などの表面、天井や床そして内壁などの内面、土台や柱そして梁などの骨格で構成されています。それともうひとつ、それは、床下空間や小屋空間そして内壁空洞など、家が完成してからでは見えない、いわゆる躯体内空間です。
 建物のこれらの要素を、総合的に健康にする必要があります。

 また、建物の表面や内面そして骨格もそれぞれが単独に存在しているわけではありません。相互に支え合い、依存し合っています。
躯体内空間は、これらを複合的につなぐ、いわば、神経や血管といった役割をしていますが、残念なことに、従来、躯体内空間は重要視されることもありませんでしたし、その存在すら忘れ去られていました。

 この躯体内空間は、日常的には見える所ではありません。こびとになったつもりで、躯体内空間の探検をしてみましょう。
 床下空間から潜って、上へ上へと探検して行きます。何が見えるか、しっかりと記憶にとどめてください。

 まず、床下空間。何か見えますか。
  コンクリートの基礎、地盤面。土台や大引などの木材。1階の床材の裏面。
 壁の中に入りました。
  柱や筋交いなどの木材。壁の裏面が見えます。
 1階と2階の間のふところ空間に入りました、今度は、何が見えますか。
  梁や桁などの木材。1階の天井と2階の床のそれぞれの裏面。
 2階の壁の中です。
  やはり、柱や筋交い。壁の裏面が見えます。
 最後に、天井裏である小屋空間にはいります。
  梁や桁、棟木や母屋などの木材。2階天井の裏面。屋根面の裏面が見えます。
 いろいろなものが見えました。少し整理してみましよう。
 躯体内空間に入って見えるものは、3つに区分されます。1つ目は、土台や柱そして梁などの構造用などの木材。2つ目は、部屋の床や壁そして天井の裏面。3つ目は、屋根や外壁そして基礎などの裏面です。
 建物のすべての基本要素が見えます。すなわち、躯体内空間は、これらの基本要素すべてに影響を与えることができる可能性があるということです。
 健康な家づくりには、躯体内空間の上手な利用が必要不可欠な所以です。
  
 建物が腐る害の原因は、当然に湿気です。
 建物が腐る。土台、柱、梁、桁、筋交いなどの構造材が、知らないうちに、劣化し、腐っていきます。これらの木材を長持ちさせるのには、どういう対策があるのでしょうか。
 「流れる空気にふれさせろ」。昔から材木業界で言われてきた言葉です。空気がよどむと腐朽菌や虫がつきやすい、繁殖しやすいということでしょう。洗濯物が、風があると乾きやすいことは、誰もが経験ずみのことです。
 土台、柱、梁などの木材が建物のどこに存在するかは、前期の探検で明らかなことです。これら、構造上重要な木材は、すべて、躯体内空間に存在しています。
 であれば、この躯体内空間に、風がすなわち空気が流れたとしたら、土台や柱などの木材が腐朽菌などに冒されずに、丈夫で長持ちするというわけです。

 屋根や壁の裏側すなわち下地材にも、ふれているのですから、これも、同じことが言えます。
湿気は、風通しがよければ、空気が常に流れていれば、解消します。しかし、いくら室内の風通しがよくても、土台や柱など躯体内空間に存在する木材には、風はあたらないのですから、この躯体内空間に十分な空気が流れる家の建て方が必要となるのです。

「夫婦の生活実感でつくる家」1997年発行 より部分的に抜粋 文:田中慶明