HOME >> 関連図書 >> 夫婦の生活実感でつくる家

夫婦の生活実感でつくる家

関連図書トップページへ

住宅がビルになる

「夫婦の生活実感でつくる家」1997年発行

「家づくりは冬を主眼におくべし。」 現代版「つれづれ草」、否、「ずれずれ草」にいわく。
 一戸建てよりマンションが暖かい。それならば住宅をビルにすべし。これが現代の家づくりにおける風潮なのです。決して悪い冗談を言っているわけではありません。
 戦後一貫して、家づくりは冬を指向して進んできました。その流れの方向は変わらず、流れの強さは増す一方です。
 ここ数年、高断熱高気密、高断熱高気密、の大合唱隊が住宅業界を徘徊しています。高断熱高気密でなければ家にあらず、家にあらずと。

 高断熱高気密の家とは、いったいどんな住宅なのでしょうか。
 いわく、極めて多量の断熱材で建物を被う。防湿フィルムで室内の気密性を極限まで高める。窓は断熱サッシにして面積を小さくする。その結果、室内の自然な換気が極端に少なくなることは自明の理ということになります。そんな家にしたら、酸欠状態になったり、室内の空気が汚れて危険ではないでしょうか。

 ご心配無用、大丈夫です。大船に乗ったつもりで任せてください。家中にダクトをはりめぐらせ、最新の機械設備による365日24時間換気をいたします。
 さらにご予算をかけていただけば、暖房装置もおつけして全館暖房完備とすることができます。まさしくあこがれの住宅、夢の家ではありませんか。
 あっ、忘れていました、冷房も当然のせられます。ご予算に応じてですが。
 これが、「危険」に対する高断熱高気密大合唱隊の返答です。 
 これでめでたく、全館冷暖房、24時間機械換気の健康住宅が大完成となります。

 いかがでしょう。まるでビルのような快適な家。技術の進歩は素晴らしいものですね。
 徒然草の著者である吉田兼好が現代に蘇ったら、「これは住宅か?」と目を白黒させることでしょう。吉田兼好先生は海外旅行をしていませんから、国外の家のつくりようは存じあげないはずです。高断熱高気密住宅は、マイナス20度にも30度にもなる、湿気の少ない極寒の国々の家づくりとお聞きになれば、一層、驚愕動転されるのではないでしょうか。
「夏をむねとすべし。」が「大寒波、氷河期に備えるべし。」に大変身してしまいました。日本列島が、まるで北極圏に大移動したかの様です。
 それならば、どうして北海道でクーラーが必要なのか。五月晴れにクーラーなのか。理解に苦しむ事ばかりです。

 ビルと住宅、その違いはどこにあるのでしょう。
 「自然との関わり方」。
 ビルは、自然とは閉ざされた関係にあります。一方、住宅は本来、開かれた関係にありました。ビルは、通常は、窓は開けずに、機械設備で空調しています。窓を開けないわけですから、当然、開口面積は小さくなる事が普通です。機械文明への信仰があってビルは成り立っています。万が一、停電が長時間つづいたら、ビルでの暮らしは破綻します。
 それにしても機械空調は欠点が多々あります。
 寒い所は寒すぎ、暑い所は暑すぎるバランスの悪さです。こんなアンバランスから冷房病も生まれます。吹き出す風も不自然で不快にさえ感じてしまいます。自然の風とは大違いです。
 こんな経験をされたことはありませんか?
 正月や夏休み、1週間空調を止めました。
 休み明けにスイッチオン。
 吹き出し口から、ハウスダストを含んだ風がでる。
ハウスダストには大量のカビやダニ。
 くさい、臭い、気持ちが悪い。
 アレルギー体質にはとても耐えられない、仕事どころではありません。
 えっ、あなたは臭さを感じない?
 それは大変。ひっとしたらあなたは、毒物に対する体内センサーの故障した不感症タイプの不健康人かも。不自然、反自然な生活のたたりです。
 だいたい湿気の多い気候の中で、ぐにゃぐにゃ長いダクトを設け、空気の流れをストップすれば、ダクトの中がカビやダニの天国なってしまうのは、誰でも想像のつくところではないでしょうか。
 おまけに音がやかましすぎます。
 スイッチオフの静けさ、ほっと気持ちが和みませんか。
 本当に、住宅をこんなビルの様な建築物にしていいものなのでしょうか。
 全身全霊で考え感じてみたいものです。