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夫婦の生活実感でつくる家

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大きくつくって狭く住む? 小さくつくって広く住む?

「夫婦の生活実感でつくる家」1997年発行

生活を見つめた家づくりをしていくと、それぞれの家族の生活に応じたプランができるはず。ところが間取りに拘わらず家そのものが画一化され、しかもどの家もどこか自然に対しこころを閉ざしているような佇まいをしている。
 開放的だった昔の住まいからは、家の前を通ると家庭のぬくもりのようなものが伝わってきた。家族の笑い声や、夕餉時には食卓を囲んで家族が食事している姿が想像できたし、家の中からもれる空気に食卓の上に乗っている物までが目に見えるようだった。
 今の住まいからは住み手の顔がみえない。家と自然のつながりがなくなり、家と家、家と人との関わりまでが稀薄になってしまっているような気がする。
 外観の画一化は、家までがフアッションと同様、流行に左右されてしまっているからかも知れない。
 出窓や、白いサッシ、外壁のデザインや色、外から見てだいたい何年当時に建てた家だというのが想像できる。
 家の中はさらに画一化している。設備機器やインテリアはもちろん時代の反映そのものである。システムキッチンのワークトップや洗面化粧台に使われる人工大理石、食器乾燥機や浄水器の装備されたシステムキッチン、洗浄機能付きトイレ、シャンプードレッサー、ジエットバス、ホームオートメーション、ひと頃流行りのホームサウナと時代の申し子は後をたたない。
 生活空間のつくりにも同じ事が言える。玄関の上の吹き抜け、廊下を導線とする個室、和室から洋室への転化、夫婦の寝室にウォークインクローゼット、ロフト、個室の子ども部屋、狭い名ばかりの書斎、カウンターのついた対面キッチンと、挙げればきりがない。
 住宅展示場やモデルハウスにはこれらの要素がほとんどとり入れられていて、家づくりには必要不可欠な要素と言った印象を与えている。
 しかもほとんどの住宅メーカーはますます設備依存度の高い住宅を志向している。にも拘わらずエコロジー、そして健康を唱えていることに大きなギャップを感じる。
 住宅に限らず一つの流行がつくられるのは、テレビ・新聞・雑誌と言った、いわゆるマスメディアの力に依るところが大きい。
知らず知らずのうちにつくられた世界へと導かれ、気づいたら流行の渦の中にいたなどということになりかねない。
 そして、本当は必要のないものまでとり入れてしまったり、自分自身の生活や暮らしにそぐわないものまでが必要に思えてきたりしてしまう。
 画一化されているのは、外観や設備機器、インテリアに限らない。「大きくつくって狭く住む」という表現に代表される生活の窮屈さ、間取りに関しても同じことが言える。
 家をつくるということは確かに新しい生活の場をつくることではあるけれど、環境が変わっても生活そのものが変わる訳ではない、ところが家づくりは、今の生活習慣から脱皮したいと考えている人にとっては願ってもないチャンスに思えてしまう。
 企画住宅は、こうした心理状況をうまくつかんで、自分たちの企画した住まいがいかにもあなたの生活をこんなに変えますといっているような気がしてならない。
 生活を変える、あるいは習慣からの脱皮は自分自身の問題、本人の意識改革がなければ変わりようがない。
 家が変わっても生活は変わらない。だから自分たちの暮らしに合わせてプランを考えることが家づくりの大きなポイントとなってくるのである。
 にも拘わらず何故か結果として同じような間取りになってしまうのは、住宅展示場や住宅雑誌で見慣れ過ぎてしまって、間取りに則した自分の暮らしがイメージされてしまっているのかも知れない。一種の擦り込み現象なのだろうか。
 玄関を入ると玄関ホール・中廊下につながって、二階へ上がる階段がある。玄関ホールから見えるのは中廊下と各室へ入るドア。
 一階は家族空間のL(リビング)D(ダイニング)K(キッチン)に和室と水回り、二階は夫婦の寝室に子供部屋といったパターンが基本となって、さらに一部屋ないし二部屋、個室がプラスされるかっこうとなる。LDKと個室の数を総称して、五LDKの間取り、六LDKの間取りと一般的に呼ばれる。
 この何LDKの間取りの考え方は、個室を重視したところから生まれている。何LDKの間取りがこれほどまでに浸透したのは、住まい手も、家族がそれぞれ自分だけの時間を持てる場ができることに自己の存在感、あるいは豊かさの象徴のようなものを感じたからかも知れない。
 そしてそうした個室のそれぞれに目的に応じた名前がつけられると、必要な空間のような気になってきて、ゆとりがあれば応接室や泊まり客のための部屋も欲しいなどとなってくる。
 小さい頃自分の部屋が持てなかった世代のお父さんやお母さんにとっては、自分たちの子どもには子ども部屋をつくってやりたいという気持ちが強いはず。
 恐らくそうした世代のお父さんやお母さんが育った間取りは、襖や障子で仕切られていたものの、開ければほとんど一つながりとなるような空間だったのではないだろうか。
 そこで個室の重要性というものをとりわけ肌で感じているのかも知れない。でもちょっと考えて見てほしい。ふすまや障子を開け放した時の開放感、部屋の広がりはどうだったろうかと。 そんなに大きな家でなかったとしても、二部屋三部屋とひとつながりの空間となれば、狭さは感じなかったのではないだろうか。しかも襖や障子を閉じればドアの個室ほどのプライバシーは守れないものの一応個室空間とすることもできたはず。
 狭く感じる家というのは、部屋の大きさの問題であって、家自体の大きさではないことになってくる。
 小さくつくっても広々と生活することのできる広がり空間の間取り。広がり空間は、引き戸のもつ空間の融通性を随所に生かし、空間のつながりと同じように家族のこころのつながりを
大切にした触れ合いのある間取り。
 欲しいと思っている個室を個室として考えず、コーナー部分、ひと続きの空間の中に設けることで機能的に、しかも小さくても広く住まえる家となる。
 例えばリビングのコーナーに設けた書斎、ダイニングの空間の延長線上にしつらえた家事コーナー。
 そしてリビングとダイニングはもちろん同じ空間の中におちつきをもてるよう配置し、客間も引き戸を使ってリビングにつなげてつくる。
 必要な時は引き戸を閉めて個室とし、普段は開けてリビングとして広々使うなどのさまざまな生活のバリエーションが楽しめる。
 もちろん中廊下などつくらなければそれだけ家族空間は広々する。必要な生活をかたちにする時、何LDKでプランするのと広がり空間の考え方でプランするのとでは家の大きさは極端に変わってくる。同じ要件が満たせて小さくつくれるなら、それこそエコロジーだと思う。

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